研究課題
アフリカトリパノソーマ症はツェツェバエによって媒介される原虫感染症である。アクチノアロライド Aは、新規12員環マクロライドであり、強力な抗トリパノソーマ活性を示し、加えて、細胞毒性を示さない。本研究課題ではアクチノアロライド Aの全合成経路の確立を目指し合成研究に着手した。アクチノアロライド Aを合成するにあたり、標的分子骨格を3つのパートに分割し最後に側鎖ユニットを導入する事とした。このことより、誘導体合成において多様性を持たせることができる。続いて、5員環へミアセタール体及び、β-ケトエステルが種々の条件に不安定であるため、全合成終盤において構築することとした。即ち、前駆体として安定なフェノールエーテルからバーチ還元によりエノールエーテルとした後、選択的オレフィンの酸化開裂に続く分子内ヘミアセタール化を行うことで導く事とした。さらに12員環フェノールエーテル構造は立体反転を伴う光延マクロエーテル化を用いて構築できると考えた。前年度までに、各フラグメント合成とそれらのカップリングによりアクチノアロライド Aの鎖状中間体の合成を達成した。また全合成の鍵反応である光延マクロエーテル化に関しても、その環化体に取得に成功している。最終年度では本環化体を用いて全合成の達成を試みた。得られた環化体をバーチ還元の条件に伏したところ、望みの4置換芳香環の還元は進行せず、また、5、6位のサイクリックカーボネートが脱離したジオレフィン体が得られた。そこで5、6位をバーチ還元に影響のないアセトニドに変換しバーチ還元を行った。不要な水酸基をラジカル的に除去し、5、6位ジオールのアセトニド保護を行った後、バーチ還元を行った。結果、望みとする芳香環部分の還元体を得ることが出来た。今後は、本化合物からアクチノアロライド Aの全合成を目指す。
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