研究課題
近年、薬剤耐性菌や多剤耐性菌は社会問題となっており、耐性菌に対して有効な薬剤や新たな創薬ターゲットの発見が求められている。このような背景のもと、本研究では、メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)、結核症およびMycobacterium avium complex症(MAC症)に焦点を当て、その生育の阻害剤、既存の抗細菌薬の増強剤や病原因子の阻害剤を微生物資源より開拓することを目的に進めている。また、興味深い抗感染症活性を示す化合物については、生化学的・分子遺伝学的な手法を駆使して、活性発現に重要な責任分子(標的分子)を同定するなどケミカルバイオロジー研究への応用を目指している。1) 探索研究:昨年度の研究により、独自のMSスペクトロメトリーを用いたネットワーク解析(Metabolomics, DOI 10.1007/s11306-016-1087-5)により希少な代謝産物をより多く生産する菌株として選別した海洋由来放線菌OPMA1730株、OPMA02852株やOPMA40551株の培養液中より、各種クロマトグラフィーを駆使して、MAC症の原因菌であるM. aviumやM. intracellulareに対して抗菌活性を示す活性物質を単離精製した。さらに、NMRを中心とした各種機器分析により4種の化合物が新物質であることを明らかにした。2) ケミカルバイオロジー研究:抗酸菌に選択的な抗菌スペクトルを有する抗結核剤calpinactamの結合タンパク質の解析のために、ジアジリンにもとづくフォトアフィニティービーズを作製した。次いで、365nmのUV照射下で、化合物を固定化した樹脂を調製し、M. smegmatisのタンパク抽出液の中より、化合物と親和性を有するタンパク質を検索した結果、calpinactam結合タンパク質として数種のタンパク質を見出した。
2: おおむね順調に進展している
当該年度の計画に従って順調に進んでいる。とくに探索研究については、独自のMSスペクトリーにもとづくアプローチから数種の微生物由来の新規化合物を発見することに繋がった。
1) 取得した新規化合物については、特許出願や論文投稿を進めていく。2) 新たに発見した化合物の作用機序の解析研究についても検討する。
当初計画していたよりも物品費が少なくなり差額が生じたため。
今年度の物品費を増額させることで研究試薬の購入などに充てがう計画である。
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すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (4件) (うち国際共著 3件、 査読あり 4件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (1件)
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