研究課題/領域番号 |
15K07872
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研究機関 | 武蔵野大学 |
研究代表者 |
廣谷 功 武蔵野大学, 薬学研究所, 教授 (70192721)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | ジアステレオ選択的反応 / ケタール化反応 / 不斉第四級炭素 / 不斉四置換炭素 / アルカロイド / 不斉合成 |
研究実績の概要 |
これまでの研究で合成に成功している方法と同様の経路がベンゼン環を C2 位に有する化合物に適用可能かどうかを試すため,まず C2 位に不斉炭素を有する置換基を導入した 1,3-cyclohexanedione に対して CuI または Pd(0) を触媒とし,ヨードベンゼンとのカップリング反応を試みた.しかし,反応は全く進行せず,原料回収にとどまった.そこで,最初に CuI を触媒としてベンゼン環を導入し,不斉炭素はアルケンの不斉ジヒドロキシル化反応で導入する経路を検討することにした.その結果,2-allyl- および 2-cinnamyl-2-phenyl-1,3-cyclohexanedione を効率良く合成することに成功した.ついで,実際に不斉ジヒドロキシル化反応を行う前に,二つのカルボニル基のどちらを選択するかというジアステレオ選択性を検証することにした.検討の結果,allyl 基を導入した基質では 96:4 の選択性で,cinnamyl 基を導入した基質では単一の化合物としてヘミケタールを得ることができ,C2 位にベンゼン環が存在する化合物でも高ジアステレオ選択的にケタール化反応が進行することを明らかにできた. 一方,不斉第四級炭素から不斉四置換炭素への変換に関しては,Beckmann 転位反応の検討を行った.ケトンからオキシムの変換では,通常は幾何異性体の混合物が得られるが,本化合物では不斉第四級炭素の存在により,得られたオキシムは単一化合物であった.転位反応はオキシムの水酸基をトシル化後,シリカゲルと室温で反応させる緩和な条件で進行し,立体選択的に環状ケトンをラクタムに変換する手法を確立できた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
研究実績概要に記載したように,1,3-cyclohexanedione の C2 位にベンゼン環とアリル単位を有する基質の効率的な合成方法の確立とアルケンのジヒドロキシル化反応によりジアステレオ選択的にケタール化反応が進行することを明らかにできた.しかし,この原料合成手法が芳香環上に多彩な官能基が存在している化合物に対して利用可能かどうか,またベンゼン環上の置換基がジアステレオ選択的ケタール化反応に与える影響に関しては未だに試していない.また,最終的には生物活性化合物の不斉合成への適用を計画しているため,不斉ジヒドロキシル化反応による不斉合成への展開の実施も急務であると考えている.
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今後の研究の推進方策 |
まず,合成法を確立している化合物を用いて,本法が不斉合成に適用可能かどうかを明らかにする必要がある.一般的にはジヒドロキシル化反応は,1,2-トランスアルケンに対して有効であることから,2-cinnamyl-2-phenyl-1,3-cyclohexanedioneと 本化合物のベンゼン環上に置換基を有する誘導体を中心に基質と反応条件の最適化を優先的に実施して行いたい.また,本法を生物活性化合物の不斉合成に展開するために,C2 位に導入するベンゼン環に置換基をもつ化合物の合成と不斉ジヒドロキシル化反応を試すことを二番目に実施する予定である.
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