研究課題
平成27年度の研究から,C2位にベンゼン環とアリル単位またはシンナミル単位を有する1,3-シクロヘキサンジオン誘導体のアルケンのジヒドロキシル化反応においても,高いジアステレオ選択性でケタール化が進行することを明らかにすることができた.そこで,平成28年度は,この基質を用いた場合の不斉ジヒドロキシル化反応でどれ程の光学純度で生成物が得られるかの検討をまず最初に行った.反応は,tert-ブタノールと水の混合溶媒中,市販のAD-mix-alphaまたはAD-mix-betaを用いて0°Cで行い,どちらの場合にも86~95%の化学収率と90%程度の光学収率で生成物を得ることができた.なお,生成物の絶対配置は,まずヘミケタールをケタールに変換後,ついでケトンを還元して第二級アルコールを得たのち,(R)- および (S)-MTPAエステルに変換し,NMRの化学シフトの変化を観察することにより決定した.さらに,本反応の一般性を確認するためにC2位のベンゼン環に様々な置換基を導入した化合物やシンナミル基の芳香環に置換基を導入した化合物を合成して光学純度のさらなる上昇を試みた.しかし,微量ではあるが,予想しなかった化合物が生成した.この化合物はヘミケタールからケタールへの変換の際に,水酸基にプロトン化後に脱水してカルボカチオンが生成し,異性化を伴ってケタール化が進行した生成物であると予想している.これまでの研究により,野依教授らの手法を改良したヘミケタールと水酸基を同一分子内にもつ化合物を2,6-lutidine存在下にtrimethylsilyl trifluoromethanesulfonateと反応させると低温でケタール化が進行することを明らかにしている.今後,この反応条件のような緩和な条件でのケタール化反応を検討する予定である.
3: やや遅れている
研究実験概要にも記載したように,高い光学純度でケタールを合成する条件の確立,生成物の絶対配置の決定には成功したが,予想していなかった化合物が生成することも明らかになった.この副生成物は目的化合物との分離が極めて困難であるばかりでなく,微量しか生成しないことから構造を決定するために時間を予想外の時間を要してしまった.また,酸触媒の変更など,副生成物が生成しない条件の探索を行なってきたが,解決には至っていないのが現状である.
本法を生物活性化合物の不斉全合成に適用するためには,まずケタール化した化合物に存在するカルボニル基をケトン以外の官能基に変換する必要がある.予備的な実験により,ケトンの立体選択的還元とアセチル化,ケタールの部分加水分解によるヘミケタールへの変換を行った.本化合物のヘミケタールの開環,生成するカルボニル基の修飾が不斉全合成への鍵となる.次年度は本法の開発と実際に生物活性化合物の全合成完成を目的として研究を実施したい.
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