研究課題/領域番号 |
15K07874
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研究機関 | 明治薬科大学 |
研究代表者 |
高波 利克 明治薬科大学, 薬学部, 教授 (40241111)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 光線力学治療 / ポルフィリン光増感剤 / ケイ素官能基 / 酸化電位 / 吸収波長 / C-H活性化 / βーシリル化 / イリジウム触媒 |
研究実績の概要 |
次世代の光線力学的治療(PDT)用ポルフィリン光増感剤には、光線過敏症を発症しない「速やかな薬物代謝」、及び高い組織透過性や他の生体物質へのダメージを最小限に抑えることのできる「長波長化」の二点が求められている。本研究は、シリルメチル基やジシラニル基などのケイ素官能基をポルフィリン環に導入することにより酸化電位の大幅な低下や吸収波長の著しい長波長化が期待できることに着目し、これらのケイ素の特性を利用した新たなPDT用ポルフィリン光増感剤の開発基盤を構築することを目的に遂行するものである。 平成27年度は、これまで例のなかったポルフィリンのβ位への直接的シリル化について検討した。その結果、Irを触媒に用いるとポルフィリンのβ位のC-H活性化を伴い、シリル基が位置選択的に導入できることを見出した。この反応は、対応するホウ素かとは異なり、様々な置換基をもつポルフィリン化合物に適用可能で、しかも、1種類の生成物のみを与えるなどの複雑なポルフィリン化合物を構築する上での優れた利点をもつ。現在本成果を適当なジャーナルへの投稿を準備中である。 また、本研究の関連事項として、新規なポルフィリン二量体の構築と不斉認識能をもつホスト分子としての利用を検討し、本二量体が様々なアルコールの非破壊的絶対配置決定に利用できることを報告した。さらに、エステルなどの官能基をもつKnochel型のGrignard反応剤を用いたポルフィリンの新規修飾反応を開発した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の予定通り、C-H活性化を伴うポルフィリンのβ位へのシリル基の導入反応を首尾良く開発することが出来た。また、この反応は類似のホウ素化よりも位置選択性や適用範囲に予想以上に優れていることを見出した。本研究成果については近々適当なジャーナルへ投稿する予定である。
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今後の研究の推進方策 |
ポルフィリンのβ位へのシリル基導入に続き、meso位へのシリル基導入について検討する。meso位は隣接する二つのβ炭素上の水素により立体的混み合いが大きく、そのシリル化は未だにチャレンジングなテーマである。本研究では、IrまたはRh触媒を用いたハロゲン化ポルフィリンと適当なシリル化剤とのカップリング反応を主に検討する。また、β-シリル化反応に関連して、これらのシリルポルフィリンの光化学的・電気化学的物性を明らかにするとともに合成素子としての有用性を明らかにする。
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