研究課題
次世代の光線力学的治療(PDT)用ポルフィリン光増感剤には、光線過敏症を発症しない「速やかな薬物代謝」、及び高い組織透過性や他の生体物質へのダメージを最小限に抑えることのできる「長波長化」の二点が求められている。本研究は、シリルメチル基やジシラニル基などのケイ素官能基をポルフィリン環に導入することにより酸化電位の大幅な低下や吸収波長の著しい長波長化が期待できることに着目し、これらのケイ素の特性を利用した新たなPDT用ポルフィリン光増感剤の開発基盤を構築することを目的に遂行した。平成29年度は、前年度に明らかにしたポルフィリンのβ位へのシリル化反応に続き、ポルフィリン環のmeso位へのシリル基導入について検討した。ポルフィリン環のmeso位は、隣接する二つの水素によりβ位よりも嵩高いため、シリル基との接近が困難となり、その結果、効果的なmeso位をシリル化する方法は従来殆ど知られていなかった。これに対し、Ni触媒存在下、クロスカップリング反応においてこれまでケイ素源として殆ど利用されていなかったシリル亜鉛反応剤を用いると、meso-ブロモポルフィリンとの反応が比較的効率良く進行し、meso位へのシリル基導入が達成できることを見出した。また、導入されたシリル基のフッ素官能基やヒドロキシ基など多の官能基へ容易に変換できることを見出し、meso-シリルポルフィリンの合成阻止としての有用性を明らかにした。一方、シリルポルフィリンの物性や反応性解明の一環として、β-シリルポルフィリンの臭素化について精査したところ、中心にNiを導入すると無金属体とは異なり、β位のシリル基を残したままmeso位の臭素化が選択的に進行することを見出した。現在、上述のいくつかの新規修飾反応の拡張ポルフィリンへの適用を通じてより実用に近いPDT用ポルフィリン光増感剤の設計を試みている。
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