研究課題/領域番号 |
15K07875
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研究機関 | 名城大学 |
研究代表者 |
北垣 伸治 名城大学, 薬学部, 教授 (20281818)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | ホスフィン / 含窒素複素環 / 不斉合成 / [3+2]環化反応 / [2.2]パラシクロファン / アレン / Morita-Baylis-Hillman反応 |
研究実績の概要 |
1. アレニルエステルとイミンのエナンチオ選択的[3+2]環化付加反応 平成28年度までに、独自に開発した[2.2]パラシクロファン骨格含有ホスフィン-フェノール触媒の、N-トシル芳香族イミンと2,3-ブタジエン酸エチル(アレニルエステル)の[3+2]環化付加反応への適用可能性について検討した。その結果、オルト位に置換基を有するベンズアルジミンを基質に用いた場合に90%前後の不斉収率で所望の環化付加体が生成することを見出した。一方で同じ触媒をパラ位に置換基を有するベンズアルジミンの反応に用いるとエナンチオ選択性が低かった。そこで平成29年度は、用いる触媒の構造について検討を加え、オルト置換体で良好な結果が得られた触媒の、リン原子上のアリール基に結合している2つのメチル基をより嵩高いt-ブチル基にすることで、選択性が80%前後にまで改善できることがわかった。 2. アレニルエステルとイサチン由来の3-アルキリデン-2-オキシインドールのエナンチオ選択的[3+2]環化付加反応 アレニルエステルの反応相手の2π成分として、イミンの代わりにイサチン由来のアルケンを用いた反応では、平成28年度の時点で所望の[3+2]環化付加体、スピロシクロペンテンオキシインドールが最高82%の不斉収率で得られていたが、平成29年度のさらなる研究によって、最高不斉収率が93%まで向上した。また、アレニルエステルの代わりにMorita-Baylis-Hillman反応生成物(MBH付加体)を用いた[3+2]環化付加反応においても最高93%のエナンチオ選択性が得られた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
「キラルホスフィン触媒を用いる含窒素複素環化合物の不斉合成」と題した本研究では、アザ-MBH反応、アレンと2π成分間の環化付加反応、およびMBH付加体を用いる環化反応の3反応が、ホスフィン触媒によって進行することが知られているため、我々が独自に開発したキラルホスフィン触媒をそれらに適用することにより、生理活性物質中に見られる各種含窒素複素環化合物を高エナンチオ選択的に合成することを目指している。この3年間で、アザ-MBH反応を利用した複素環化合物合成において進展は見られなかったが、残る2反応において進展が見られた。 1. アレニルエステルとイミンのエナンチオ選択的[3+2]環化付加反応 光学活性ジヒドロピロール誘導体を与えるアレニルエステルとイミンのエナンチオ選択的[3+2]環化付加反応において、当初はオルト位に置換基を有するN-トシルベンズアルジミンでのみ好結果が得られていたが、平成29年度にはオルト位に置換基がない場合にも触媒の構造修飾により好結果が得られ、高い基質一般性を示すことができた。さらに本反応の生成物を既知化合物に誘導することにより、優先絶対立体配置を決定することができたため、この時点で得られた結果をまとめ、Org. Biomol. Chem.に論文を投稿し、受理された。 2. アレニルエステルとアルキリデンインドリノンのエナンチオ選択的[3+2]環化付加反応 生理活性物質の骨格中に見られるスピロシクロペンテンオキシインドール構造を構築するための、アレニルエステルと3-アルキリデン-2-オキシインドールの[3+2]環化付加反応では、まだ検討途中であるが、現状で最高不斉収率が90%を超えており、さらなる進展が十分期待できる。また、平成28年度から検討を始めたMBH付加体を用いる反応も、予想通りアレニルエステルと同様の成果が得られているので、問題はない。
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今後の研究の推進方策 |
1. アレニルエステルとアルキリデンインドリノンのエナンチオ選択的[3+2]環化付加反応 アレニルエステルとイサチン由来の3-アルキリデン-2-オキシインドールの[3+2]環化付加反応では、パラ置換ベンズアルジミンとの[3+2]環化付加反応で良好な結果が得られた3,5-ジ-t-ブチルフェニル基を有するホスフィン触媒を用いると高い反応性と選択性を示すことがわかっている。本触媒の特長として、既存の触媒ではアルケン部分の末端置換基がアリール基の場合のみ高い反応性と選択性を示すが、本触媒ではアリール基のみならず、アルキニル基の場合においても良好な反応性と選択性が得られていることが挙げられる。今後はさらにアルケニル基、アルキル基を持つ基質に対して反応を行い、一般性を明らかにする。反応性に問題が生じれば、ホスフィン触媒の3,5-ジ-t-ブチルフェニル基の4位に電子供与性のメトキシ基を導入した新たな触媒を調製し反応に適用する。 2. MBH付加体とアルキリデンインドリノンのエナンチオ選択的[3+2]環化付加反応 MBH付加体とイサチン由来の3-アルキリデン-2-オキシインドールの[3+2]環化付加反応においては、アレニルエステルの反応のように嵩高いt-ブチル基を有する触媒では反応性が低く、高い収率と選択性が得られない。現在は、t-ブチル基の代わりにメチル基を有する触媒で良好な結果が得られている。今後は、その触媒を用いて基質一般性を明らかにするとともに、さらに触媒中のメチル基をも除去した立体的に小さい触媒の適用も検討する。また、既存の触媒との相違を明確にするとともに立体反応経路について考察すべく、反応中間体の同定をNMR等の機器分析法を用いて試みる。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額が50万円と少し額が小さいため、節約して使用した。今後についても、節約しながら有効に使用していく。
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