1. アレニルエステルとイサチン由来アルケンのエナンチオ選択的[3+2]環化付加反応 前年度に引き続き、生理活性物質の骨格中に見られる光学活性スピロシクロペンタンオキシインドール構造の効率的構築法を開拓するため、独自に開発した面不斉[2.2]パラシクロファン骨格含有ホスフィン-フェノール触媒を用い、アレニルエステルとイサチン由来アルケンのエナンチオ選択的[3+2]環化付加反応を検討した。これまでは、3位メチリデン基上の置換基がアリール基である2-オキシインドールをアルケン基質として用い、最高93%のエナンチオ選択性が得られることを明らかにしてきたが、今年度は、各種アルキル基およびアルケニル基を置換基とする基質を検討した。その結果、アリール基の場合と同様に、直鎖および枝分かれしたアルキル基やシンナミル基の場合でも高い反応性が観測され、しかも高位置、高ジアステレオ、および高エナンチオ選択的に所望の[3+2]環化付加体が得られた。 2. MBH付加体とイサチン由来アルケンのエナンチオ選択的[3+2]環化付加反応 アレニルエステルの代わりにMorita-Baylis-Hillman反応生成物(MBH付加体)を用いた[3+2]環化付加反応においても、独自に開発した触媒により、これまでに最高93%のエナンチオ選択性が得られることを明らかにしてきた。今年度は、イサチン由来の各種アルケン基質について一般性を検討した。その結果、本反応において高い反応性および選択性が得られる基質は3位メチリデン基上の置換基がアリール基の2-オキシインドールに限定されることが判明し、反応遷移状態において触媒-MBH付加体とアルケン基質のアリール置換基の間でπ-π相互作用に基づく安定化が存在する可能性が示唆された。
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