研究課題/領域番号 |
15K07876
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研究機関 | 大阪大谷大学 |
研究代表者 |
池尻 昌宏 大阪大谷大学, 薬学部, 准教授 (00412396)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 蛍光分子 / 金属イオン / 蛍光タンパク質 / 芳香族複素環 |
研究実績の概要 |
昨年度の研究結果から、非対称ジアリールメチレン型イミダゾリノン類(Asym-DAIN)の励起波長についてはTDDFT計算による予想が有効的であることが判明したので、数種のAsym-DAINをPC上で作成し、その励起波長を計算した。置換基の種類や芳香環の大きさ、多環式などのAsym-DAINについて解析を行ったが、いずれのケースにおいても、E-体とZ-体との間で顕著な波長差は得られなかった。そのため、励起波長の違いによる幾何異性体間での蛍光スイッチング分子への展開は一旦、中止とし、センサー機能による蛍光スイッチング分子への展開を進めた。まずは、金属イオン認識センサーへの展開として、含窒素芳香族複素環を有するAsym-DAINを設計し、その合成を検討したところ、幾つかの改良は必要であったが、従来のDAIN骨格構築反応を用いることで、目的物の合成に成功した。今回のAsym-DAINにおいても、紫外光と可視光を使い分けることで、幾何異性体間での光異性化反応が見られたが、従来のAsym-DAINと同様にその比率は十分な値ではなかった。しかしながら今回のケースについては、E-体とZ-体の分離が容易であったため、さらに詳細な解析を進めている。金属イオンの捕獲能については、現在のところ、亜鉛イオンについての知見を得ている。詳細な検討については、紫外可視吸収スペクトルや蛍光スペクトル、1H-NMR等を用いて現在、解析中である。なお、予備的実験の段階ではあるが、光誘起電子移動(PeT)機構の可能性が考えられる知見を得ており、今後の展開に興味が持たれる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
Asym-DAINについての多用な非対称構造の構築という点においては、当初の想定とは異なった結果・展開となっているため、遅れているといえる。一方、蛍光プローブへの展開という点では、金属イオン認識分子への展開を開始しているので、概ね順調ともいえる。よって総合的な判断として、やや遅れていると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
蛍光プローブへの展開については、H28年度に引き続き、金属イオンの認識を目的とした誘導体合成を行う。誘導体の設計については、他の含窒素芳香族複素環の利用や芳香環の側鎖への金属認識置換基の導入を予定している。しかしながら、これら蛍光プローブへの展開については、現在検討中の結果次第では大きな方針転換も考えられる。特にPeT機構の有無は大きなポイントとなる。そこでその場合には、金属イオン認識型ではなく、分子内配位型のAsym-DAINを合成し、PeT機構の有無を再検討する。また、プランBとして、非対称ジアリール構造部分を消光基とした新たなDAIN構造への展開も想定している。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究の進捗状況が計画よりもやや遅れているためと考えられる。具体的には、有機合成実験に用いる消耗品の費用や、学会出張等に関する旅費が想定よりも少なかったためと考えられる。
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次年度使用額の使用計画 |
繰り越し額が13万円程度であるが、H29年度の直接経費請求額が90万円であり、これはH28年度(請求額100万円)よりもマイナス10万円になっているので、合計ではH28年度と同程度の予算となる。H29年度の研究計画から想定される研究費用は、H28年度と同程度になると思われるので、使用計画については大きな変更はない。
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