研究課題
分子内閉環反応の進行のしやすさは一般的にBaldwin則に従うのが通例である。従って、endoとexoの環化様式が共に許容の場合には反応の制御が難しく、またBaldwin則禁制の環化反応は特殊な場合を除いて進行しない。私はこれらの制限を打破すべく、環化後に除去あるいは官能基化が可能な配向基を導入したアルキンを設計し、これを環化反応に付すことで、endo体とexo体をそれぞれ一方的に作り分けでき、尚且つBaldwin則禁制とされている環化様式にも適用可能な統一的方法論を開発することを目的として研究を行った。Endo選択的な環化反応には、アミド基が置換したアルキンであるイナミドを利用した。私は既に、ヨード環化反応においてイナミドを基質として用いることで、反応性が飛躍的に向上することをベンゾフラン合成法において実証している(J. Org. Chem. 2014)。そこで、従来法ではヨード環化に適用できなかったホモプロパルギルヒドラジドにイナミドを導入したところ、中程度の収率で6-endo環化体であるジヒドロピリダジン類が得られることを明らかにした(第41回反応と合成の進歩シンポジウム)。Exo選択的な環化反応には、β-シリル効果を狙って、シリル基が置換したアルキンを用いた。今年度はセリンから容易に誘導可能なシリルプロパルギルグリシン誘導体を基質とし、求電子剤として1価のカチオン性ヨウ素試薬を適用したところ、Baldwin則禁制の求電子的4-exo-dig環化が進行することを見出した。一方、同じ基質に対して求電子剤として1価の金触媒を用いると、予期に反して5-endo-dig型環化が進行することを明らかとした。従って、本基質においてβ-シリル効果はヨウ素を求電子剤とする場合に有効であることが判明した。
2: おおむね順調に進展している
当初の研究計画調書のとおり実施できている。
上記の4-exo-dig型環化反応の反応条件は最適化しており、また求核部位である窒素の保護基はFmoc基が最も良い結果を与えることも見出していることから、現在基質一般性について検討中である。また、金触媒を用いる5-endo-dig型環化についても併せて基質適用範囲を確認する予定である。
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J. Phys. Chem. Lett.
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10.1021/acs.jpclett.5b00291
Photochem. Photobiol. Sci.
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http://www.kobepharma-u.ac.jp/ocls/