分子内閉環反応の進行のしやすさは通常Baldwin則に従うことから、endoとexoの環化様式が共に許容の場合には反応の制御が難しい。私は、環化後に除去あるいは官能基化が可能な配向基を導入したアルキンを環化前駆体として設定し、これを閉環反応に付すことでendo体とexo体をそれぞれ一方的に作り分けできる統一的方法論の開発を目指した。 Endo選択的な環化反応には、アミド基が置換したアルキン、即ちイナミドをヨード環化反応の基質に用いると、通常のアルキンに比して反応性が飛躍的に向上することを実証している(J. Org. Chem. 2014)。本反応は5-endo型反応であることから、本事業ではより環化反応が難しいとされる6-endo、7-endo、及び8-endo型閉環反応によるエーテル環合成に挑戦した。その結果、6-endoは3秒、7-endoは1分で完結し、6及び7員環エーテルを高収率で与えることを見出した。さらに、最も難易度が高い8-endo型閉環反応も3時間で完了し、中程度の収率で8員環エーテルが得られた。なお、アルキン類のヨード環化反応における8員環合成は本反応が初めての例である(第43回反応と合成の進歩シンポジウム 1P-65)。 一方で、β-シリル効果を期待できるシリルアルキンを基質として設定することで、ヨード環化反応がexo選択的に進行することを見出した(第42回反応と合成の進歩シンポジウム 1P-18)。なお、シリルアルキンに対して求電子剤として1価の金触媒を用いた分子内ヒドロアミノ化を検討したところ、β-シリル効果は全く関与せず、5-endo-dig型環化が進行することも明らかにしている(日本薬学会第136年会 25PA-am119S)。
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