研究課題/領域番号 |
15K07879
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研究機関 | 兵庫医療大学 |
研究代表者 |
吉岡 英斗 兵庫医療大学, 薬学部, 助教 (80435685)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | ベンザイン / [2+2]型反応 / ラジカル / 光触媒 / 一電子移動 |
研究実績の概要 |
寿命の短い不安定な化学種は、一般に反応制御に困難が伴う一方、適した条件を探索・設定できれば新規反応の開発や標的分子合成の効率化が期待される。今回、高速かつ効率的な反応の開拓を目指し、ベンザインやラジカルなどの不安定化学種に着目し、下記の研究を行った。 新規ベンザイン前駆体の開発:多様な置換基を許容できるようにするためにベンザイン前駆体の安定性向上を目指し、弱い脱離能を有する2つの置換基X基/Y基を有する置換ベンゼン類をいくつか合成した。ベンザインの発生効率向上を目指し、ベンゼン環上の両置換基に二種類の活性化剤を加えて適切に活性化させる条件検討を行った。置換基Yを固定した上で置換基Xについて、類似したX1、X2、X3、…を合成して活性化剤共存下でその反応性を精査した結果、X基の脱離能が高過ぎると既知のベンザイン前駆体で観察される副反応が進行することが判明した。また、活性化剤の組み合わせについて、特に金属塩が有するルイス酸性に着目して検討した。まだ検討途中だが、そのオキソフィリシティが活性化に重要であることが分かりつつある。 新規[2+2]型反応の開発:ベンザインとDMF、六員環ジケトン、チオール類の四成分連結反応を精査し、天然物の重要な基本骨格の一つであるキサンテン骨格の新規構築法を報告した。また、ベンザインとC=N二重結合の新規[2+2]型反応を目指し、C=N二重結合性化合物を新たに合成し、ベンザインとの反応を検討した。その結果、環状化合物を用いた際に含窒素二環性芳香族化合物が合成できることが分かりつつある。 光触媒を活用したラジカル反応開発:まず、非活性なハロゲン化アルカンをハロゲン結合で活性化するため、計算化学を利用して供与体について有効に働く官能基を明らかにした。本知見をもとに、有機色素を用いた触媒的なラジカル反応への応用を進め、成果の一部をまとめつつある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
異なる研究を並行して進めており、また、計算化学を利用したメカニズム解析を行っている。このように、リソースの振り分けをしていることにより、問題が生じた際も柔軟に対応できており、おおよそ予定した成果が得られたと考えている。 ただ、ハロゲン結合を利用した不活性化合物の活性化に関連した研究内容について、同種の研究内容の一部がごく最近報告されており、進展を急ぐ必要性が生じていると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
新規ベンザイン前駆体を用いた二重活性化型のベンザイン発生の研究として、ベンザイン発生に有効な2つの活性化剤と脱離基X基/Y基の詳細を引き続き明らかにしていく。その後、ベンザイン上の置換基効果について明らかにするため、-OMeや-Meなどの電子供与性基および-Clや-CF3などの電子吸引基を有する前駆体を合成する。また、X基/Y基の位置を交換したものもいくつか合成する。これらについて、σ結合挿入反応、[2+3]型反応などの既知反応について検討し、二重活性化型ベンザイン発生の有効性およびその適用範囲を明らかにする。合わせて、非対称な置換ベンザインの位置選択性の詳細について計算化学を活用して解明していく。 また、ベンザインとC=X結合の[2+2]型反応を基盤とした反応展開として、ベンゾジアゼピン骨格の形成を目指す。反応から得られたキサンテン骨格が官能基選択的に変換できることに着目し、その応用展開を進めていく。 光触媒を活用したラジカル反応への展開では、非活性なハロゲン化アルカンの活性化について、海外グループと競合していることが判明したため、その有効範囲を明らかにするなど早期に研究をまとめていく。合わせて、カルボニル化合物の活性化について、カルボニル酸素をハロゲン結合などで活性化またはカルボニル炭素をラジカルやカルベンなどで活性化することでの反応活性種発生を検討する。 上記から得られた成果は、学会発表や論文投稿などにより積極的に発信していく。
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備考 |
研究者作成のWebページ。
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