研究課題
平成29年度は、ビーズミル粉砕により調製したcyclosporin A (CyA)/poloxamer 407(P407)ナノ懸濁液について検討を行った。Suspended-state NMR測定の予備検討として、得られた薬物ナノ懸濁液について保存安定性試験を行い、経時的な粒子径測定を行った。その結果、保存時間の増加と共に粒子の凝集が認められた。次に、各保存時間経過後の懸濁液を凍結乾燥し、得られた凍結乾燥物について粉末X線回折、赤外分光及び固体NMR測定を行い、CyAとP407の分子状態を評価した。各測定結果の解析より、湿式粉砕直後はCyA非晶質ナノ粒子が形成されていることが示された。本ナノ粒子にはP407が粒子と水の固液界面のみならず、ナノ粒子内部にも取り込まれており、これがCyAの非晶質状態の安定化に寄与していると推察された。一方、保存時間の増加に伴いCyAの結晶化が観察され、これが粒子の凝集を引き起こしたと考えられた。またCyA結晶化に伴い、P407のナノ粒子内部からの放出が示唆された。今後は、suspended-state NMR測定によりダイレクトに保存におけるCyA/ P407ナノ懸濁液の構造及び分子状態の変化を観察する予定である。本研究期間中に、suspended-state NMR測定により各種薬物ナノ懸濁液の形成・安定化メカニズムを分子レベルで明らかとすることに成功した。本研究より、suspended-state NMR法が薬物ナノ懸濁液製剤の品質評価に役立つ有用な測定法であることを示すことができた。今後益々求められていく薬物ナノ懸濁液製剤の開発において本研究が新しい指針となり、高品質の新規薬物ナノ懸濁液製剤の創生に役立つものと期待している。
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