研究実績の概要 |
本研究代表者が考案した「フィードバック制御と固定三角波制御を併用したフローレイショメトリー」において,合流時における試料溶液と滴定液の流量比をより正確に反映した検出信号を得るために,気節法の導入と信号処理による相認識法を検討した。本年度は,以下の2件について検討した。 第17改正日本薬局方医薬品の定量への応用に関して検討した。炭酸水素ナトリウムを酸塩基滴定により,フロセミドおよびイソニアジドを非水滴定(原理的には酸塩基滴定)によりそれぞれ定量した。炭酸水素ナトリウムでは反応の進行に伴って発生した二酸化炭素が液相信号の測定を妨害したため,検出器直前で多孔質テフロン膜により除去した。フロセミドは,N,N-ジメチルホルムアミドに溶かし,水酸化ナトリウム標準液で滴定した。イソニアジドは,酢酸・無水酢酸混合溶液 (5:1) に溶かし,過塩素酸標準液で滴定した。いずれにおいても,相対誤差4%未満で日本薬局方のバッチ滴定法による結果と一致した。滴定効率は,反応促進のため長め(4.5 cm)のビーズ充填反応コイルを用いたこと,精度向上のため固定三角波制御の走査速度を低下させたこと(300 mV/s)により,最高18.7滴定/分に留まった。1滴定に要する試料および試薬の量は,公定法の1/90および1/150程度であった。 工程管理への応用に関する研究では,2種類の制御信号(フローレイショメトリーによる製品濃度の測定のための制御信号と,その結果をもとに,一定規格の製品が得られるように原料の混合比を調整する制御信号)を用いる流れシステムを構築した。食酢の製造工程を想定し,酢酸を用いて検討したところ,製品濃度が大きく変化しても(たとえば0.1 Mから0.3 Mに変化),7分以内に設定濃度へと収束させることができた。
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