研究課題
本研究では、活性酸素発生能を有するキノンを標識試薬として用いて、紫外線照射等により発光反応を制御可能な化学発光分析法の開発を目的としている。本年度は、前年度までの検討により開発したアントラキノン-2-カルボニルクロリドを標識試薬として用いるアミン類のオンライン紫外線照射 HPLC 化学発光検出システムの性能評価と実試料応用を行った。紫外線照射条件及び化学発光反応条件の最適化を行った後のフェネチルアミン及びトリプタミンの検出下限 (S/N=3) は、それぞれ 84 nM 及び 124 nM であり、この感度は LC-TOF-MS 法と同程度であり、アントラキノン-2-カルボニルクロリドを試薬として用いる HPLC-UV 法と比較して 10-50 倍程高感度であった。また、本法はポストカラム試薬として活性酸素を送液する必要がないことから、発光シグナルが安定化し、日内及び日間の繰返し測定の再現性 (n=5) がそれぞれ 3.3-6.1% 及び 6.6-9.3% と良好であった。次に、本法の実試料応用としてワインに含まれるフェネチルアミン及びトリプタミンの定量を行った。ワイン試料の前処理操作としてアセトニトリルを溶媒とする塩析液-液抽出を行うことにより、ワイン中からフェネチルアミン及びトリプタミンの誘導体ピークを良好に検出することが可能であった。赤ワイン及び白ワイン各 2 種類ずつを用いて、これらに含まれるフェネチルアミン及びトリプタミンの濃度を定量した結果、これまでの報告値とよく一致した値が得られた。一方で、前年度に合成したフェニルボロン酸構造を有するキノンをアリールハライドに対する標識試薬として用いるための検討を行ったが、この化合物からは効果的な発光が観察されなかったことから化学発光標識試薬として用いることは困難であると考えられた。
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