研究課題/領域番号 |
15K07892
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研究機関 | 長崎大学 |
研究代表者 |
柴田 孝之 長崎大学, 医歯薬学総合研究科(薬学系), 助教 (10448491)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 慢性閉塞性肺疾患 / ペプチド / 蛍光反応 / 血液 / 喀痰 / 臨床検査 |
研究実績の概要 |
本研究では、慢性閉塞性肺疾患(COPD)の早期検査法の確立を最終目標に据え、申請者らが発見した3,4-ジヒドロキシ安息香酸(3,4-DHBA)を用いるペプチド配列特異的な蛍光反応を応用し、COPDのバイオマーカーとして見出されたトリペプチドであるプロリン‐グリシン‐プロリン(PGP)を標的とした、生体試料中のPGPを簡便かつ迅速に定量できる技術の創製を目的としている。 平成28年度は、実際に生体試料としてヒト血清を使用して、血清中PGPの定量の可能性を検討した。まず、血清がPGP蛍光反応に及ぼす影響を調べたところ、わずか10μLの血清をPGP蛍光反応液に添加するだけで蛍光反応が阻害されることが分かった。そこで、反応阻害物質の除去を目的として、有機溶媒による血清の前処理を試みた。それと同時に、前処理に使用する有機溶媒が蛍光反応に及ぼす影響を評価した。その結果、アルコール系溶媒を使用すると血清タンパク質を効率よく除去できること、更にPGP蛍光反応によって得られる蛍光強度が増強することを見出した。最終的に、エタノールを前処理溶媒として採用し、100μLの血清をPGP蛍光反応に供する反応条件を確立した。 この最適化された条件を用いて、PGPの添加回収実験を行った。すなわち、濃度既知のPGP標準液を添加した血清100μLを使用して、エタノール処理を経て蛍光反応に付した。これにより得られた蛍光強度を検量線で定量し、産出したPGP量を実際に添加したPGP量と比較した。その結果、回収率は89~100%であった。以上、今年度の研究では、ヒト血清を用いてPGP量を正確に定量する手法を開発した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究計画書に記載した通り、ヒト血清を用いてPGPの定量に成功したことから、おおむね順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
当初の研究計画では血液を用いてCOPD診断法へ展開する予定であった。しかし、COPD患者の血液検体の入手が困難であること、血液中PGP濃度を測定する既報が再現困難であること、肺の状態を最も反映する喀痰が購入可能であること等を踏まえ、今後はCOPD患者の喀痰サンプルを入手し、喀痰中PGPの定量を通じてCOPDのスクリーニング検査法へ展開する予定である。同時に、高速液体クロマトグラフィーを使用した生体試料中の蛍光物質の構造決定も引き続き行う予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成28年度の研究により、検査対象となる生体試料をヒト血液からヒト喀痰に変更した方が研究目的を遂行できる可能性が高いと判断したため、ヒト血清を購入するための支出を抑え、その分高額なヒト喀痰を平成29年度に購入する計画を立てたため、次年度に費用を回した。
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次年度使用額の使用計画 |
上記の通り、研究に用いるヒト喀痰は海外で販売されているため、その購入費に充てる。
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