研究課題/領域番号 |
15K07893
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研究機関 | 岐阜薬科大学 |
研究代表者 |
笹井 泰志 岐阜薬科大学, 薬学部, 准教授 (60336633)
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研究分担者 |
山内 行玄 松山大学, 薬学部, 准教授 (10461378)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 細胞培養基板 / 原子移動ラジカル重合 / 生体適合性高分子 / 高分子ブラシ / タンパク質吸着抑制効果 / プラズマ表面処理 |
研究実績の概要 |
本研究は、ポリスチレンを基板とするスフェロイド状細胞培養用基板の開発を目的に、生体適合高分子ブラシからなるハイドロゲル薄膜を合成するとともに、プラズマ表面処理によるその表面の機能化を行うものである。 ポリスチレン基板表面に合成するハイドロゲル薄膜として、前年度までに合成したpoly[2-(methacryloyloxy)ethyl dimethyl-(3-sulfopropyl) ammonium hydroxide] (PMEDSAH)の高分子ブラシに加え、poly(2-hydroxyethyl methacrylate)(PHEMA)およびpoly(2-methacryloyloxyethy phosphorylcholine)(PMPC)の高分子ブラシの合成条件を確立した。各表面への細胞接着性を評価したところ、いずれの高分子についても、30nm程度の極薄膜ブラシ層でも強い細胞接着抑制効果が確認できた。次に、それら高分子ブラシ表面へのプラズマ表面処理効果について、化学構造をX線光電子分光スペクトル(XPS)、そして、プラズマ誘起ラジカルの構造を電子スピン共鳴スペクトル(ESR)により解析した。XPSの解析結果より、短時間のプラズマ表面処理により、いずれの高分子ブラシにおいてもエステル側鎖の脱離の進行が示された。また、ESRの解析結果より、PMPCでは、側鎖の脱離後、生成したラジカルに起因する逐次的な主鎖切断反応に伴う主鎖切断型ラジカルのみが観測されたのに対し、PMEDSAHおよびPHEMAでは、それ以外のラジカルも複数種検出され、エステル基の違いによるプラズマ反応特性の違いを明らかにした。これらの結果は、各高分子ブラシへのプラズマ表面処理により、側鎖構造に依存した細胞との相互作用が発現する可能性を示唆している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の予定であった各種生体適合性高分子からなる高分子ブラシのプラズマ反応特性を解析することができた。一方、生体分子間相互作用解析装置BIACOREを用いて、高分子ブラシおよびその表面へプラズマ表面処理した表面へのタンパク質吸着特性を定量的に評価する予定であったが、調製した試料の測定への適用が困難であったため、代替法を確立する必要があり、種々検討い、水晶振動子マイクロバランス(QCM)での評価系確立ができたが、その結果、本検討項目は進捗がやや遅れた。 全体的には、研究の最終年度(平成29年度)に向け、計画通りおおむね順調に進めることができている
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今後の研究の推進方策 |
平成28年度の検討で、各種高分子ブラシへのプラズマ表面処理効果がある程度解明することができた。それらの結果をもとに、平成29年度は、プラズマ表面処理効果による高分子ブラシの吸水特性などの物性変化とともにその表面化学構造と細胞との相互作用を評価する。また、高分子ブラシ表面へフォトマスクを介したプラズマ表面処理を行い、プラズマ暴露部位(細胞集積部位)および非暴露部位(細胞非接着部位)のパターニングを行い、球状細胞凝集体(スフェロイド)のアレイ培養のための表面最適化(高分子ブラシに使用する高分子の選択、ハイドロゲル層の厚み、プラズマ照射条件など)を行う。なお、細胞には、HepG2を用い、アルブミン産生能などから、プラズマ加工を利用した高分子ブラシからなる機能性ハイドロゲル薄膜のスフェロイド細胞培養基板としての有用性を明らかにしていく。
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