研究課題/領域番号 |
15K07896
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研究機関 | 浜松医科大学 |
研究代表者 |
清水 広介 浜松医科大学, 光尖端医学教育研究センター, 准教授 (30423841)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | イメージング / がん / リポソーム / ターゲティング / DDS |
研究実績の概要 |
平成28年度は、調製したアクチベータブル近赤外蛍光プローブ(P-ICG2)封入リポソームのインビボ応用を行なった。まず、血清中でのP-ICG2のリポソーム封入安定性を調べたところ、リポソーム化していないP-ICG2では血清添加とともに強い蛍光が確認でき、非特異的な蛍光アクチベーションが起こってしまったのに対し、P-ICG2封入リポソームでは、非特異的な蛍光アクチベーションは起こらず、血清中においても封入を維持できていることを確認した。次にルシフェラーゼ遺伝子を恒常的に発現するヒト肺がんA549-Luc細胞をBALB/c nu/nuマウスに尾静脈投与し、肺がんモデルを作製した。肺がん形成が確認された移植49日目に、P-ICG2封入リポソーム(P-ICG2-Lip)を尾静脈内投与し、IVISを用いてインビボ蛍光イメージングを行なったところ、リポソームの集積が多い肝臓での蛍光は確認できたが、肺におけるICG由来の蛍光は確認できなかった。一方、がん組織内に多く浸潤していることが知られているマクロファージを標的可能なリポソームにP-ICG2を封入したP-ICG2-PS-Lipを用い、マウス扁平上皮がんKLN 205および結腸がんColon26 NL-17細胞の皮下移植固形がん担がんマウスにおける全身蛍光イメージングを行なったところ、Colon26 NL-17固形がんおよびKLN 205固形がん共にがん組織における蛍光を確認できた。また実際投与24時間後に固形がんを摘出し、エクスビボにて蛍光観察を行なったところ、両固形がんにおいてICG由来の蛍光を確認できた。以上の結果から、平成28年度研究期間において、がん組織に多く存在するマクロファージを標的化したリポソームに封入したP-ICG2を用いることで、固形がんの存在をインビボの系にて検出できることを確認できた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成28年度の研究実施計画では、調製したP-ICG2封入リポソームを用いて、担がんマウスにおけるがんの検出を目的としていた。結果的に、調製したP-ICG2封入リポソームは血清中でも安定であること、さらにはマクロファージを標的としたリポソームに封入することで、固形がんでの蛍光をインビボで確認することに成功した。よって研究はおおむね順調に進んでいると評価した。
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今後の研究の推進方策 |
研究機関の最終年度である平成29年度においては、がん細胞を標的としたリポソームを用いて固形がん担がんマウスにおける蛍光イメージングを行い、蛍光イメージング診断薬としての可能性を探るとともに、がん検出の機構について、免疫染色等を駆使することで解明する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成28年度途中にて所属が変更となり、新任地での研究体制のセットアップ(実験室の実験環境整備、動物実験やRI実験のための手続き等)に時間を費やさなければならない状況となり、物品費購入が予定よりも大幅に減少してしまった。また平成28年度内に開催予定であった国際リポソーム会議(Liposome Research Days Conference)にて研究成果発表を予定していたが、開催が次年度(平成29年9月ギリシャにて開催予定)に延期となったため、旅費についても平成28年度の使用額が減り、次年度使用額が生じる結果となった。
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次年度使用額の使用計画 |
研究体制は既に整っているため、次年度にて使用額を費やし研究計画を元に実験を進めていく予定である。平成29年度は特に担がん動物を用いた検討がメインとなり、がん細胞を標的としたリポソームを用いて固形がん担がんマウスにおける蛍光イメージングを行い、蛍光イメージング診断薬としての可能性を探るとともに、がん検出の機構について、免疫染色等を駆使することで解明する予定である。 また延期となっていた国際リポソーム会議への参加および研究成果の発表を予定している。
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