平成29年度は、マクロファージ標的化PS修飾リポソームの集積が高かったKLN205固形がんおよび低かったColon26 NL-17固形がんの免疫組織染色を行い、まず2種の固形がんにおけるがん微小環境の違いを調べた。ヘマトキシリン&エオジン染色の結果、KLN 205固形がんにおいてはがん細胞のみならず非常に豊富な間質の存在が確認できたのに対し、Colon26 NL-17固形がんにおいては、ほとんどががん細胞で構成されていた。また、血管平滑筋のみならず活性化線維芽細胞に多く発現しており、間質のマーカーとしても用いられているαSMAおよび、血管内皮細胞マーカーとしてCD31を免疫染色し、その染色像の違いを調べたところ、KLN205固形がんにおいてαSMAが間質領域に非常に多く発現していることが明らかとなった。このため2種の微小環境の違いは、マクロファージ刺激による間質構築によるものと考えられた。最後に、実際にPS修飾P-ICG2封入リポソームおよびマクロファージ未標的化PC修飾P-ICG2封入リポソームを、KLN205またはColon26 NL-17担がんマウスに投与した際の、固形がんにおけるICGの蛍光発光について、全身蛍光イメージングシステムMaestroにて評価を行なった。この結果、Colon26 NL-17固形がんにおいては、PS修飾リポソームに比べPC修飾リポソームにて高い蛍光が確認されたのに対し、KLN205固形がんにおいてはPS修飾リポソームにおいて高い蛍光が確認された。すなわち、マクロファージが多く存在することが示唆されたKLN205固形がんにおいて、PS修飾リポソームは高い集積を示し、内封するP-ICG2が酵素特異的切断を受けることにより蛍光発光が起こったことが示された。よって本製剤は、がん診断を可能とする新たな蛍光イメージング製剤として期待された。
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