HIVがヒト細胞へ感染することを阻止し、さらに薬剤耐性を発症しない作用機構を持った、新しいレクチン(アクチノヒビンと命名)をより効果的な新しいHIV感染予防薬として改良するための構造基板を確立することを目的に、X線結晶構造解析を進め、アクチノヒビンとHIV外套糖タンパク質との複合体の結晶解析に取り組んだ。 アクチノヒビンの立体構造は38個のアミノ酸残基からなる3つのセグメントが対称的に配置した環状の構造を形成しており、それぞれのセグメントには、糖鎖に結合するポケットがあることが明らかとなった。各ポケットには1個の高マンノース型糖鎖が結合するので、アクチノヒビンの3個のポケットには3個の高マンノース型糖鎖が同時に結合することになり、アクチノヒビンのHIVの外套タンパク質への結合はかなり特異的で強いと考えられ、α-1,2マンノビオースとの複合体の結晶を調製することに成功し、さらにアクチノヒビンとα-1,2マンノビオースとの糖複合体の結晶構造を明らかにすることができた。 大腸菌を用いた効率の良いアクチノヒビンの発現系を構築し、それを用いた結晶化を進めた。 コンピューターによるアクチノヒビンと糖鎖およびgp120とのドッキングシミュレーションから、複数の結合様式による糖鎖結合部位が候補に挙がった。これらの結合部位情報をもとにすることで、結晶化の条件を再度検討することが可能になった。
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