研究実績の概要 |
我々は、最近、SHIP2触媒ドメインの大量発現系の構築、及びSHIP2阻害剤探索のためのSHIP2アッセイ系の構築に成功した。しかし、同一化合物においても、得られるIC50値が測定の度に大きくばらつくという問題があった。そこで、安定したIC50値が得られるようにアッセイ系の条件の最適化を行った。様々な条件を検討したところ、以下のような手順により安定したIC50値が得られるようになった。 ①先ず、アッセイ用プレートのウェル内で精製したSHIP2触媒ドメインとSHIP2阻害能を測定したい対象化合物を混和し、室温で2時間静置する。 ②次に、基質であるIns(1,3,4,5)P4(Inositol 1,3,4,5-tetrakisphosphate)をウェルに加え、室温で20分静置する。 ③5%トリクロロ酢酸を加えることで反応をストップさせる。 ④基質から遊離したリン酸を、マラカイトグリーンを用いた比色法により検出する。 以上の手順の中で、安定したIC50値を得るために最も重要だった点は、「SHIP2触媒ドメインと対象化合物を混和して長時間静置すること」であった。このことは、SHIP2は阻害剤と結合する際にInduced-Fit(誘導適合)のような大きな構造変化を起こす可能性があることを示唆している。また、既知SHIP2阻害剤であるAS1949490についても文献で報告されているIC50値を再現できるようになった。
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