研究課題/領域番号 |
15K07901
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研究機関 | 東京理科大学 |
研究代表者 |
山下 親正 東京理科大学, 薬学部, 教授 (30622188)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | ドラックデリバリーシステム / 吸入システム / 再生医療 |
研究実績の概要 |
慢性閉塞性肺疾患(COPD)は世界の死亡原因の第3位(患者数2億人)であるにもかかわらず、破壊された肺胞を修復する有効な根治療法は開発されていない。 そこで、本研究では肺胞上皮幹細胞の分化誘導を基盤とした世界初の肺胞再生治療薬を開発することを目的としており、本年度は、新規肺胞再生薬物の安全性評価と共に、作用部位への効率的なデリバリー技術を見出すことを目指して検討を進めた。 我々は新規肺胞再生薬物の一つとしてレチノイン酸誘導体Am80が核内受容体に作用して肺胞上皮幹細胞の分化を促し、肺胞再生効果を新規肺胞再生治療薬の候補薬物となりうることを見出している。ところで、COPDの患者は肺がんを併発していることが比較的多くみられており、このAm80が肺胞再生治療薬となるためには、肺がんを悪化させないことが必要条件である。このことを確かめるために、肺がん細胞に対するAm80の影響について検討した。その結果、肺がん細胞を分化誘導してがん増殖抑制効果を示すことを明らかにすることができた。 次に、Am80の肺胞再生効果を最大限に引き出すためには、Am80を効率良く核内にデリバリーさせるドラックキャリアーを見出すことが重要である。この目的を達成するために、細胞内環境応答材料を用いた多機能性ナノ粒子(ssPalm)を着目して検討を行った。つまり、足場の異なる三種類のssPalmにそれぞれAm80を封入し、これらをエラスターゼ誘発性肺気腫モデルマウスに投与し、Am80の肺胞修復効果について検討した。その結果、一種類のssPalmだけがフリーのAm80よりも少ない用量で肺胞修復効果を見られることを明らかにすることができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は、新規肺胞再生薬物の安全性評価と共に、作用部位への効率的なデリバリー技術を見出すことを目指して検討を進めた。その結果、新規肺胞再生治療薬の候補の一つであるレチノイン酸誘導体Am80に肺がん細胞に対する増殖抑制効果があることを見出すとともに、エラスターゼ誘発性肺気腫モデルマウスを用いて、フリーのAm80よりも少ない用量で肺胞修復効果を見られるドラックキャリアーを見出すことができた。 これらの知見は、本研究の目標である肺胞上皮幹細胞の分化誘導を基盤とした世界初の肺胞再生治療薬の開発に着実に貢献していると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
今後は新規肺胞再生薬物の一つであるAm80がin vivoにおいても肺がんにも有効であることを示すと共に、本年度に見出した効率良く肺胞修復効果を誘導するssPalmの有効性の再現性とそのメカニズムの一部を解明することを目標とする。 一方で、難溶性のAm80を新規肺胞再生治療薬として開発するためには、臨床応用できる粉末吸入システムを構築することが重要である。そこで、我々が開発した粉末吸入システムであるOtsuka Dry Powder Inhalation(ODPI) Systemを難溶性薬物にも適用できるように、改良する。さらに、ODPI Systemの課題である高含量化を達成するために、CAS(セルアライブシステム)等の適用も考慮する。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究に遂行する際に必要な数万円以上する抗体やPCRに使用する試薬等を購入するために、予算を繰り越した。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度に繰り越した予算はSP-Aの抗体やSYBR Premix Ex TagⅡ等の試薬購入費の一部に充当する予定である。
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