平成30年度はこれまでの成果に基づき、L-ロイシン(Leu)にマンニトール(Man)0~10%、トレハロース(Tre)0~5%を組み合わせることで、保存時の耐吸湿性に優れ、吸入時に崩壊し、肺深部で膨潤する噴霧急速凍結乾燥(SFD)粉末剤の粒子設計を行った。さらに、エクセルのソルバー機能を用いて,粒子の崩壊率(R)を算出する新規手法を構築した。 全製剤においてD50が10μm前後の単一な粒度分布が観測され、球状中空多孔粒子が得られた。アンダーセンカスケードインパクタ(ACI)を用いて吸入特性評価を行った。Man無添加と比べて添加時は、Rは45%程度から50~60%に増加し、空気力学的質量中位径は減少したことから、Manが粒子の崩壊に有用であることが示された。 37℃、相対湿度50~95%での各SFD製剤の吸湿性を、動的水分吸着測定装置にて評価した。Leuの割合が多いほど高湿度下でも優れた耐吸湿性を示した。ManとTreの添加により高湿度下での吸湿性は相乗的に高くなった。Leu、Man及びTreの比率を調節することにより、保存時は耐吸湿性に優れ、肺内の高湿度環境下では吸湿する製剤が調製可能であることが示唆された。 膨潤性を3つの手法で評価した。Man5%及びTre1%含有製剤(M5T1)を37℃の水浴上の高湿度環境に10 sec曝露したところ、電子顕微鏡観察で膨潤した粒子が観察された。37℃の恒温槽内で製剤M5T1をACIに吸引後各プレート上の粒子を採取し、ACIを再度組み立て高湿度の空気を吸引後各プレート上の粒子を採取したところ、後者では中空多孔性が失われ膨潤した。37℃の恒温槽内で、吸入器とACIの間に設置したの容器(乾燥又は高湿度環境)を通過した製剤M5T1のACI解析を行ったところ、後者では粒子径が増大し、吸湿・膨潤することが示唆された。
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