研究課題
既存の制がんテトラゾラト架橋白金(II)二核錯体(テトラゾラト架橋錯体)が、非常に高効率にL1210マウス白血病細胞に取り込まれ、蓄積することを確認した。ほとんどのテトラゾラト架橋錯体は、シスプラチンよりも数倍~数十倍高い細胞内蓄積量を示した。シスプラチンの細胞内蓄積量は、L1210シスプラチン耐性細胞において、著しく低下した。一方、テトラゾラト架橋錯体の場合、むしろL1210シスプラチン耐性細胞において、より高効率に細胞内に蓄積することがわかった。つまり、シスプラチンとテトラゾラト架橋錯体の細胞内取込機構は、明らかに異なると推定される。また、7種類のテトラゾラト架橋錯体を新たに合成し、標的指向性DDSキャリアとの複合体を形成させ、そのin vitroおよびin vivo活性を検討した。DDSキャリア導入による効果は、B16悪性黒色腫移植マウスの延命率において、明らかに認められた。さらに、マウスに移植した腫瘍の増殖を99.8%抑制する錯体を、新規錯体の中に見いだすことが出来た。
2: おおむね順調に進展している
テトラゾラト架橋錯体が、従来の白金制がん剤とは異なる機構でがん細胞内に取り込まれることが分かり、白金制がん剤に対して耐性を獲得したがんに対して有効な治療薬を開発できる可能性が高まった。また、顕著なin vivo抗腫瘍効果を発揮する錯体が、新規錯体の中から見いだされた。
マウスに移植した腫瘍の増殖を99.8%抑制する錯体を見いだすことが出来たので、in vivo実験を繰り返し、顕著な抗腫瘍効果の再現性を確認する。また、この錯体を基盤に様々な誘導体を合成し、創薬研究を進める。
27年度末実施予定のin vivo実験に使用するマウスの購入に充てる予定であったが、共同研究者とin vivo実験の詳細を練り直してから、次年度に実施することにした。共同研究者との会合は、年度末の薬学会年会で行った。
28年度のin vivo実験に使用するマウスの購入費に充てる予定である。
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Scientific Reports
巻: 6 ページ: 24712-24725
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Metallomics
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