研究課題
テトラゾール5位に様々な官能基を導入した、一連のテトラゾラト架橋白金(II)二核錯体(テトラゾラト架橋錯体)について、colon-26大腸がん細胞を移植したマウスを用いてin vivo 抗腫瘍効果(腫瘍縮小効果)を調べた。テトラゾール5位に導入した官能基に含まれるアルキル鎖のメチレン基数やフッ素原子数の違いによって、抗腫瘍効果が大きく変わることが分かり、詳細な構造活性相関を構築することができた。いくつかの誘導体については、大腸がん治療薬オキサリプラチンよりも遙かに高い抗腫瘍効果を発揮するだけでなく、単回(静脈内)投与にも関わらず、効果が数週間持続することが確認された。テトラゾラト架橋錯体と血清アルブミンが強く結合することを示唆する結果が得られていることから、アルブミンとの複合体形成によるEnhanced Permeability and Retention(EPR)効果が、テトラゾラト架橋錯体の持続的かつ顕著な抗腫瘍効果に寄与していると推定した。また、腫瘍が大きく成長してからテトラゾラト架橋錯体を投与した場合においても、高い効果を発揮することが確認された。さらに、テトラゾラト架橋錯体を投与したマウス群と薬剤を投与しない対照マウス群の体重を測定したが、錯体投与群に有意な体重減少はほとんど観測されなかった。一方で、テトラゾラト架橋錯体を標的指向性DDS キャリアと組み合わせて投与した場合、期待された抗腫瘍効果は得られなかった。以上のことから、一連のテトラゾラト架橋錯体が非常に有望な医薬品候補化合物であり、次世代白金製剤として開発を進めるべき基本骨格を有することが明らかになった。
すべて 2018 2017 その他
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (7件) (うち国際学会 1件、 招待講演 2件) 備考 (1件)
Journal of Inorganic Biochemistry
巻: 177 ページ: 359~367
10.1016/j.jinorgbio.2017.08.010
http://www.asahi-net.or.jp/~ij4s-kmd/index.html