研究課題/領域番号 |
15K07906
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研究機関 | 京都薬科大学 |
研究代表者 |
武上 茂彦 京都薬科大学, 薬学部, 准教授 (70298686)
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研究期間 (年度) |
2015-10-21 – 2018-03-31
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キーワード | イオン液体 / ナノ粒子 / 分光学的手法 / MRI / 癌 / イメージング |
研究実績の概要 |
本申請課題は、従来のMRIを用いた「癌の画像診断」の問題点(感度が低い、造影剤の特異性が低い、コントラストが低い)を解決するために、機能性イオン液体ナノ粒子とマルチカラーイメージング対応フッ素MRIプローブを新規に開発し、次世代フッ素MRIによる癌のマルチカラーイメージングを達成するための基盤となる研究を行なうことを目的としている。本研究の目的を達成するにあたり、ナノ粒子を形成するためのイオン液体の特性と血中投与後を想定したイオン液体ナノ粒子(ILNP)の安定性を評価することは極めて重要である。初年度は、この2点に重点を置き、これらについて分光学的手法(NMR法や動的光散乱法)を用いて検討した。種々のイオン液体について、分散媒に水、界面活性剤としてSpan80とTween20を用いて乳化し、ILNPを形成するかを調べたところ、メトキシエチルメチルピロリジウムカチオンとビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドアニオンからなるMEMPTFSIにおいて均一な懸濁液が得られた。この懸濁液をH-NMRやF-NMR、H-H NOESYを用いて詳細に検討した結果、ILNPの形成が確認され、ILNPはイオン液体を分散質とする水中イオン液体(IL-in-water)型エマルション構造を有することが明らかとなった。ILNPの粒子径およびゼータ電位はそれぞれ、100-300 nmと-30 mVであり、室温保存で約1ヶ月は安定であった。次に、体内投与後を想定し、生理食塩水中でのILNPの粒子径変化を測定した。ILNPの粒子径は、生理食塩水中で24時間、調製時とほぼ変わらず一定であった。次年度は、生体投与可能なILNPを創製し、このILNPのマウスにおける血中滞留性および臓器移行性についてF-NMRを用いて明らかにしていく予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
平成27年度に、マウスにおけるイオン液体ナノ粒子(ILNP)の血中滞留性および臓器移行性といった基礎的な体内動態パラメータについてF-NMRを用いて得る予定であったがまだ得られていない。その理由として、生体投与可能なILNPがまだ完成していないからであった。すなわち、H-NMRやF-NMRを用いてILNP懸濁液を測定したところ、ILNPの形成とともに、一部のイオン液体が分散媒の水中に溶解して、アニオンとカチオンが遊離して存在していることが確認された。遊離のアニオンとカチオンは生体内において毒性を有する可能性があるため、現在、ゲルろ過や透析等の手段により、ILNPを安定な状態に保ちつつ、遊離のアニオンとカチオンを懸濁液より取り除く条件を検討中である。
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今後の研究の推進方策 |
生体投与可能なイオン液体ナノ粒子(ILNP)を早急に完成させる予定である。また、F-MRIマルチカラーイメージングのFシグナル源となるフッ素化合物を付加したグルタチオンを母核とするF-MRIプローブを新規に合成し、ILNPへの溶解性を確認する。また、癌細胞で高発現している酵素であるグルタミルトランスフェラーゼをF-MRIプローブに作用させ、F-MRIプローブの切断前後で、F-MRIプローブの化学シフトが変化するかをF-NMRを用いて調べる。平成28年度後期には、ILNPの表面にノルハルマン(pKa=7.1)を修飾し、血液中(pH 7.4)ではマイナスのゼータ電位を持ち、癌組織中(pH 6.5)でゼータ電位がプラスに反転することにより、癌細胞親和性を高めたILNPの開発を行なう。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究に必要な機器・試薬等を購入していった結果、残金が867円となった。この金額では新たに試薬等を購入するのは不足なので、残金を次年度に繰り越し有効に利用したい。
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次年度使用額の使用計画 |
翌年度配当額である1,000,867円の内訳として、消耗品費 900,867円、国内旅費 50,000円、英文校閲料 50,000円を計画している。
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