本申請課題は、機能性イオン液体ナノ粒子とマルチカラーイメージング対応フッ素MRIプローブを新規に開発し、次世代フッ素MRIによる癌のマルチカラーイメージングを達成するための基盤となる研究をおこなうことを目的としている。初年度において、イオン液体として、メトキシエチルメチルピロリジウム(MEMP)カチオンとビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(TFSI)アニオンからなるMEMPTFSIを分散質とした、イオン液体ナノ粒子(ILNP)を調製することができた。次年度は、癌細胞特異的なフッ素MRIプローブとして、グルタチオンを母体とするプローブの開発に成功した。そこで、最終年度は、マウスにおけるILNPの血中滞留性および臓器移行性に関するデータを得ることを目標とした。まず、マウス血液にILNPを添加したin vitro実験においては、TFSIアニオン由来のF-NMRシグナルのブロードニングが観測された。次に、マウスを用いたin vivo実験をおこなった。すなわち、ILNPをマウスの尾静脈から投与し、採取した血液および肝臓や腎臓をホモジネートした懸濁液について、F-NMRを用いて測定した。その結果、TFSIアニオン由来のF-NMRシグナルは血液および肝臓の懸濁液中よりも腎臓の懸濁液中で顕著に大きかった。in vitroおよびin vivoの両実験結果から、ILNPは生体内投与後、速やかに肝臓で分解され、TFSIアニオンとMEMPカチオンに解離するため、疎水性の高いTFSIアニオンの一部は血液の血球中に存在するが、TFSIアニオンの大部分は腎臓に蓄積し腎排泄されていくことが示唆された。
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