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2016 年度 実施状況報告書

瞬目反射条件付けを用いた学習獲得における意識状態の役割の解析

研究課題

研究課題/領域番号 15K07910
研究機関徳島文理大学

研究代表者

岸本 泰司  徳島文理大学, 薬学部, 教授 (90441592)

研究期間 (年度) 2015-04-01 – 2018-03-31
キーワード瞬目反射条件づけ / 意識 / 覚醒 / アルツハイマー病 / 自閉症スペクトラム
研究実績の概要

学習の獲得および発現に対する「覚醒、意識状態」の役割を明らかにすることを目的とする本研究の2年度目においては、前年度までに収集したマウスとサルの覚醒状態と瞬目反射学習の発現のデータを精査し、その相関関係をさらに分析した。また、予備的ではあるものの、人間の学習実験から、瞬目反射条件付け記憶の獲得における再帰的な意識(自己意識)の関与も解析し現在解析中である。その結果、程度に種差はあるものの、いずれの動物種においても瞬目反射条件づけ遅延課題では、(深い睡眠状態にならない限り)覚醒レベルが落ちていても一度獲得した記憶は出現し得ることを明らかにすることができた。他方、痕跡課題では覚醒レベルと学習獲得に大きな相関があった。
次に、来年度以降に開始する各種疾患モデル動物への本系の適応を念頭に、自閉症スペクトラム障害のモデルマウス(MDGA2 mutant mice)、統合失調症のモデルマウス(MDGA1 KO mice)、さらにはある種のアルツハイマー病モデルマウス(3xTg-AD mouse) について、学習や認知機能、社会性能力、自発性運動をはじめとした様々な行動についてデータ取得し解析を行った。これらの結果は、国際学術誌に掲載され(Kishimoto et al., 2016 Data Brief, Shishido et al., 2016 Neurosci. Lett., Connor et al., 2016 Neuron)、一部の内容については新聞誌上でも報道された。特に、MDGA2 mutant miceが、学習障害のみならず、社会性の障害および常動行動を呈することを示し、自閉症スペクトラム障害の一因が、興奮性シナプスの過剰な形成にある可能性を示すことができた。臨床上も意義が深い発見といえる。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

計画書に沿った進行を心がけているが、動物の供給等の問題より、新規実験はマウスに限られる状況になっている。しかし、これまでのデータより覚醒状態と(運動)学習の関係に必ずしも動物種差が見られないことがはっきりとしつつある。今後は、疾患モデルマウスへの適応により更なる研究の進展が期待される。現在までの進捗状況は、計画書の当初の期待を超えて進展するものではないものの、関連する新しい鉱脈も見つけおおむね順調に進展しているものと考える。

今後の研究の推進方策

今後の研究推進方策に関しては、続けて概ね計画書通りに進行する予定である。昨年度までに方法論的各種検討は十分に終了しているため、これを各種ミュータントマウスに適応し、脳疾患、瞬目反射条件づけ、意識の3者の関連について解析を行って行く予定である。

次年度使用額が生じた理由

北米神経科学学会の参加にかかる旅費を予定に入れていたが、海外の共著者が発表することになり、これを取りやめたために不要となった。

次年度使用額の使用計画

次年度は、北米神経科学学会の参加(あるいは国内での複数の学会)を予定しているため旅費支出が増える見込みにある。

  • 研究成果

    (12件)

すべて 2017 2016 その他

すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (3件) (うち国際共著 1件、 査読あり 3件、 謝辞記載あり 3件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (6件) (うち招待講演 2件) 備考 (2件)

  • [国際共同研究] The University of British Columbia(Canada)

    • 国名
      カナダ
    • 外国機関名
      The University of British Columbia
  • [雑誌論文] Altered cortical dynamics and cognitive function upon haploinsufficiency of the autism-linked excitatory synaptic suppressor MDGA22016

    • 著者名/発表者名
      S. A. Connor, I. Ammendrup-Johnsen, A. W. Chan, Y. Kishimoto, C. Murayama, N. Kurihara, A. Tada, Y. Ge, H. Lu, R. Yan, J. M. LeDue, H. Matsumoto, H. Kiyonari, Y. Kirino, F. Matsuzaki, T. Suzuki, T. H. Murphy, Y. T. Wang, T. Yamamoto, A. M. Craig
    • 雑誌名

      Neuron

      巻: 91 ページ: 1052-1068

    • DOI

      10.1016/j.neuron.2016.08.016.

    • 査読あり / 国際共著 / 謝辞記載あり
  • [雑誌論文] Data on amyloid precursor protein accumulation, spontaneous physical activity, and motor learning after traumatic brain injury in the triple-transgenic mouse model of Alzheimer's disease.2016

    • 著者名/発表者名
      Yasushi Kishimoto, Hajime Shishido, Mayumi Sawanishi, Yasunori Toyota, Masaki Ueno, Takashi Kubota, Yutaka
    • 雑誌名

      Data in Brief

      巻: 9 ページ: 62-67

    • DOI

      10.1016/j.dib.2016.08.041.

    • 査読あり / オープンアクセス / 謝辞記載あり
  • [雑誌論文] Traumatic brain injury accelerates amyloid-β deposition and impairs spatial learning in the triple-transgenic mouse model of Alzheimer’s disease.2016

    • 著者名/発表者名
      Hajime Shishido, Yasushi Kishimoto, Nobuyuki Kawai, Yasunori Toyota, Masaki Ueno, Takashi Kubota, Yutaka Kirino, Takashi Tamiya.
    • 雑誌名

      Neuroscience Letters

      巻: 629 ページ: 62-67

    • DOI

      10.1016/j.neulet.2016.06.066.

    • 査読あり / 謝辞記載あり
  • [学会発表] 「MDGA2は興奮性シナプス形成抑制因子であり、そのヘミ欠損は興奮性の亢進とASD様の行動異常をもたらす2017

    • 著者名/発表者名
      1.山本融、Connor S.A.、岸本泰司、Ammendrup-Johnsen I、栗原直和、村山千明、尾嶋大喜、Hossain R、鈴木利治、Craig AM
    • 学会等名
      日本薬学会第136年会
    • 発表場所
      東北大学
    • 年月日
      2017-03-25 – 2017-03-28
  • [学会発表] 記憶・忘却・社会性の分子機構2017

    • 著者名/発表者名
      岸本泰司
    • 学会等名
      第9回バイオナノシステムズ研究会
    • 発表場所
      徳島文理大学香川薬学部
    • 年月日
      2017-01-10 – 2017-01-10
    • 招待講演
  • [学会発表] 脳の『行き過ぎ』を抑えるしくみ2016

    • 著者名/発表者名
      岸本泰司
    • 学会等名
      第8回3大学学術交流会プログラム」「うどん県で健やかに暮らそう~健康寿命を延ばす~
    • 発表場所
      徳島文理大学村崎サイホール
    • 年月日
      2016-12-10 – 2016-12-10
    • 招待講演
  • [学会発表] シナプス形成抑制因子MDGA2のヘミ欠失マウスは興奮性入力の亢進によりもたらされる自閉症スペクトラム障害のモデルとなる2016

    • 著者名/発表者名
      山本融、Connor S、岸本泰司、Ina A-J、栗原直和、村山千明、尾嶋大喜、Hossain R、鈴木利治、Craig AM
    • 学会等名
      第39回日本分子生物学会年会
    • 発表場所
      パシフィコ横浜
    • 年月日
      2016-11-30 – 2016-12-02
  • [学会発表] Haploinsufficiency of the neuronal surface protein MDGA2 enhances excitatory synapse development, alters cortical circuit dynamics and yields behavioral phenotypes consistent with autism in mice2016

    • 著者名/発表者名
      Connor S.A., Ammendrup-Johnsen I, Chan AW, Kishimoto Y, Murayama C, Kurihara N, Tada A, Ge Y, Yan R, LeDue J, Matsumoto H, Kiyonari H, Kirino Y, Matsuzaki F, Suzuki T, Ojima D, Murphy T.H., Wang Y, Yamamoto T, Craig A
    • 学会等名
      Neuroscience 2016 (北米神経科学学会)
    • 発表場所
      San Diego, CA, U.S.A.
    • 年月日
      2016-11-12 – 2016-11-16
  • [学会発表] Altered social and cognitive functions upon haploinsufficiency of the excitatory synaptic suppressor MDGA2 in a mouse model of autism2016

    • 著者名/発表者名
      岸本泰司、栗原直和、村山千明、多田篤史、桐野豊、山本融
    • 学会等名
      日本生物物理学会第8回中国四国支部大会
    • 発表場所
      高松テルサ (高松勤労者総合福祉センター)
    • 年月日
      2016-05-28 – 2016-05-29
  • [備考] 生命物理化学講座(研究室のwbページ)

    • URL

      http://kp.bunri-u.ac.jp/kph/index-7.html

  • [備考] 研究内容紹介サイト

    • URL

      http://kp.bunri-u.ac.jp/kph16/kishimoto.html

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公開日: 2018-01-16  

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