研究実績の概要 |
本研究では、医薬品候補化合物の生体内における反応性代謝物を選択的に同定すべく、フルオラス(パーフルオロアルキル基同士がもつ特異的な親和性)を利用したグルタチオントラッピング法の開発を試みている。前年度までに、フルオラスグルタチオンを簡易的に合成し、その求電子性化合物に対するトラッピング能を確認した。本年度は、フルオラスグルタチオンを大量合成すべく、その方法についての検討を行った。先ずは、グルタチオンがもつアミノ基に対し、フルオラスカルボン酸試薬(2H,2H,3H,3H-Perfluoroundecanoic acid)を用いたアミド化反応を利用することとした。フルオラスカルボン酸は、オキサリルクロライドにより活性化した後、アミノ基との反応を行った。定法に従ってアミド化を行ったが、目的化合物を得ることはできなかった。次に、グルタチオンがもつカルボキシル基に対し、フルオラスアルコール試薬(1H,1H,2H,2H-Perfluoro-1-octanol)を用いたエステル化を試みた。グルタチオンのフルオラスによるエステル化は、既報(J. Pharmacol. Toxicol. Methods, 76, 83-95, 2015)の反応条件を参考に、硫酸の存在下にて行った。しかしながら、先のアミド化の場合と同様、目的化合物であるフルオラスグルタチオンを得ることができなかった。高極性のグルタチオンと低極性のフルオラス試薬とを反応させる際の溶媒の組成が、その効率に大きく影響しているものと考えれた。以上の結果を踏まえ、次年度以降は、より詳細な合成条件の検討を行っていくこととする。
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