研究課題/領域番号 |
15K07911
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研究機関 | 福岡大学 |
研究代表者 |
山口 政俊 福岡大学, 薬学部, 教授 (50117280)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | グルタチオントラッピング / 反応性代謝物 / フルオラス / 液体クロマトグラフィー/質量分析計 |
研究実績の概要 |
本研究では、医薬品候補化合物の生体内における反応性代謝物を選択的に同定すべく、フルオラス(パーフルオロアルキル基同士がも つ特異的な親和性)を利用したグルタチオントラッピング法の開発を試みている。前年度までに、フルオラス化グルタチオン(F-GSH)の合成方法についての検討を行っていたが、今年度も引き続き本試薬の合成方法について検討した。種々の反応を試みた結果、F-GSHの合成には、「カルボン酸クロライド型フルオラス試薬との反応」もしくは「脱水縮合剤の存在下におけるフルオラスカルボン酸との反応」が適していることを確認した。実際に、縮合剤DMT-MMの存在下、tridecafluorononanoic acidをグルタチオンと反応させたところ、F-GSHを得ることができた。さらに得られたF-GSHを用いて、生理リン酸緩衝液中において反応性代謝物のモデルである1-chloro-2,4-dinitrobenzene(CDNB)との反応を行ったところ、CDNBのトラッピングが可能であることとともに、得られた反応物のフルオラス固相抽出(F-SPE)による精製とLC-MS/MSによる分析も可能であることを確認した。また、簡易的ではあるが、反応性代謝物の存在がよく知られているアセトアミノフェンをヒト肝ミクロソーム中において代謝させたところ、アセトアミノフェンのキノン体をF-GSHでトラップすることが可能であり、その存在をLC-MS/MSにて確認することができた。しかしながら、F-GSHによるトラッピング反応の条件、得られた反応物のF-SPEによる精製条件、またLC-MS/MSによる測定条件については、未だ検討の余地があり、次年度以降に、それらのより詳細な条件検討を行っていきたいと考えている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
研究実績の概要に記載のとおり、本年度は前年度に引き続きフルオラス化グルタチオン(F-GSH)の合成について検討を行い、一定の成果を得ることができた。しかしながら、反応性代謝物のトラッピング法における種々の条件について、検討の余地が残っており、方法論の確立までには至っていない。そのため、研究の進捗はやや遅れているものと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、合成したフルオラス化グルタチオン(F-GSH)を用い、それによる反応性代謝物のトラッピング法の条件を確立させていくこととする。実際に、反応性代謝物の存在が知られている種々の医薬品(例えば、アセトアミノフェンやジクロフェナクなど)を用い、F-GSHによるトラッピング反応の条件、得られた反応物のフルオラス固相抽出(F-SPE)による精製条件、それらのLC-MS/MSによる測定条件などの詳細な検討をも行っていくものとする。
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次年度使用額が生じた理由 |
(理由) 本年度は、前年度に引き続き、フルオラス化グルタチオン(F-GSH)の合成についての検討を主に行っていたため、研究に使用した器具、試薬類は限られており、研究費の使途も当初予定していたよりも少ないものであった。そのため、次年度使用額が発生した。 (使用計画) 次年度以降は、フルオラス化グルタチオン(F-GSH)を用いた反応性代謝物のトラッピング法の確立に向けた詳細な検討お行ったいくこととする。研究費の使途としては、主に反応性代謝物同定のための試薬・器具類、分析装置(LC-MS/MS)の 消耗品の購入に充てることとする。また、その他として、成果発表・情報収集のための学会旅費や論文投稿費へと使用することとする。なお、研究費の内訳に変動が生じた場合は、消耗品費で調整することとする。
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