本研究では、医薬品候補化合物の反応性代謝物の同定に利用されるグルタチオントラッピング法の選択性を向上させるべく、フルオラス相互作用(パーフルオロアルキル基同士がも つ特異的な親和性)を利用した方法論の開発を行った。前年度までに、フルオラス化グルタチオン(F-GSH)の合成し、反応性代謝物のトラッピングを試みたが、F-GSHの水への溶解性等が原因と思われる反応性の低さから、実用性については疑問があった。そこで、本年度は、通常のGSHによる反応性代謝物をとラッピングした後、GSHのα-カルボン酸のみを選択的に誘導体化する方法の検討を行った。種々の検討の結果、無水酢酸、ギ酸、ペンタフルオロフェノールを用いて得られるオキサゾロンを経由させる方法を用いることで、GSHのα-カルボン酸のみをフルオラス試薬により、誘導体化することが可能であった。本反応は、反応性代謝物側には何ら影響を与えることなく誘導体化することが可能であり、得られた誘導体は、フルオラス固相抽出(F-SPE)やフルオラスLCにて選択的に抽出や分析することが可能であった。さらに、前年度までの検討と同様、アセトアミノフェンのヒト肝ミクロソーム中における代謝物であるキノン体の検出に利用したところ、良好な結果を得ることができた。本結果は、本法が既存の方法にはない医薬品反応性代謝物の選択的同定法として確立することができるものを示唆するものであった。
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