研究課題/領域番号 |
15K07913
|
研究機関 | 崇城大学 |
研究代表者 |
庵原 大輔 崇城大学, 薬学部, 講師 (40454954)
|
研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
|
キーワード | フラーレン / Sugammadex / ナノ粒子 / がん光線力学療法 / 生体内での凝集安定性 |
研究実績の概要 |
フラーレンC60 は既存の光増感剤と比較して活性酸素種を効率よく生成する光増感物質として注目を集めている。しかし、C60の著しく低い水への溶解性は、医薬分野への応用を困難なものとしている。また、C60は容易に不溶性凝集体や沈殿物を生じ、光線力学活性が低下する。さらに、ナノ粒子を生体内に投与後、生体成分との静電的・疎水的相互作用により粒子の凝集が生じると、本来予想される体内動態・効果が異なってくる。本研究ではアニオン性γ-シクロデキストリン誘導体(sugammadex)を用いて、生体内でも安定なC60親水性ナノ粒子を調製し、その物性、光線力学活性および静脈内投与後の臓器分布、抗腫瘍効果を検討した。C60/sugammadexナノ粒子はC60 と sugammadexを減圧下、4℃ で混合粉砕することで調製した。得られたナノ粒子の平均粒子径は約 30 nm、ζ-電位の値は約-50 mv であり、大きく負に帯電していた。このC60/sugammadexナノ粒子はPBS中や高濃度の無機塩類(Na+、K+、Ca2+、Mg2+)存在下でも安定であり、100 nm以下の粒子径を1ヶ月以上維持した。このC60/sugammadexナノ粒子は可視光照射により、活性酸素種を生成し、各種がん細胞に対して、障害活性を示した。C60ナノ粒子を担がんマウスに静脈内投与すると、C60/γ-CDナノ粒子では肝臓、脾臓への蓄積がみられたのに対し、C60/sugammadexナノ粒子では、そのような蓄積はみられず、生体内でも安定なナノ粒子として存在することが示唆された。また、ナノ粒子を静脈内投与後、腫瘍に可視光を照射することで著しい抗腫瘍効果がみられた。以上の結果より、sugammadexを用いて、生体内でも安定かつ優れた光線力学活性を有するナノC60光増感剤を調製可能なことが明らかとなった。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究課題では安全で有効性の高い光増感剤、抗酸化剤、吸着炭素製剤として多彩な機能を発揮する新規ナノカーボン医薬を創製する。本年度は生体内でも安定かつ優れた光線力学活性を有するナノC60光増感剤の構築を目的に検討を行い、当初の予定通り、アニオン性γーシクロデキストリン誘導体を用いて、生体内でも安定かつ優れた光線力学活性を有するナノC60光増感剤を調製可能なことを明らかとした(論文投稿準備中)。安全で有効性の高い光増感剤として機能する新規ナノカーボン医薬の創製は順調に進行中である。
|
今後の研究の推進方策 |
慢性腎不全の進行抑制・予防を企図したナノC60吸着炭素製剤の構築を目的に、C60ナノ粒子の吸着能を系統的に評価し、尿毒症物質に対する吸着機構を明らかにする。さらに、慢性腎不全モデルラットを用いて腎不全亢進に対する抑制効果を明らかにし、新規ナノC60吸着炭素製剤を構築する。
|