筋萎縮性側索硬化症(ALS)の原因因子FUSタンパク質は通常、細胞の核内においてRNAに結合し機能すると考えられている。一方、患者由来遺伝子変異によって産生されるFUSR495X変異体は、核内移行シグナルを欠如するため細胞質に局在する。しかしながら、R495Xは分子内におけるRNAとの結合領域は保持しているため、細胞質で異所的にRNAと結合する機能を持った結果、疾患を引き起こすという疾患発症分子機構が考えられた。そこで、本研究では、R495Xが実際に細胞内においてどのような機能を獲得しているのか、大規模シーケンスにより網羅的に明らかにすることとした。平成27年度は大規模シーケンスを行うため、まず初めに、マウスES細胞由来神経細胞にFUSR495X変異体を発現させる実験系の構築を行った。同細胞において、以下の実験に必要な量のタンパク質発現を確認した後、R495Xに結合するRNAをCLIP法により取得しライブラリを調整した。また、発現しているRNAを網羅的に明らかとするためTotal RNAを用いたライブラリを調整した。更に、細胞質内の成熟mRNAにR495X変異体が結合することによって後の翻訳過程を阻害もしくは亢進する可能性が考えられたため、Ribosome profiling法によりribosomeに取り込まれたRNAを網羅的に取得しライブラリを調整した。これらライブラリを用いて大規模シーケンスを行い、得られたリードをゲノムにマッピングした結果、今後の解析に十分な量と質のシーケンス結果が得られたことが分かった。
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