研究課題/領域番号 |
15K07918
|
研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
中矢 正 北海道大学, 薬学研究院, 助教 (50374559)
|
研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
|
キーワード | ALS / FUS / R495X / 大規模シーケンス |
研究実績の概要 |
核内タンパク質FUSをコードするFUS遺伝子の変異は筋萎縮性側索硬化症(ALS)を引き起こすことが知られている。しかしながら、その発症分子機構は明らかではない。本研究では患者由来変異である、495番目のアルギニンがストップコドンに変異したR495X変異体を用いて、疾患発症に関わる分子機構の解明を目指している。昨年度までにCLIP, RNA-seq, Ribo-seqにおけるシーケンスを行い、得られたデータをゲノムにマッピングした。今年度は、これらの結果についてより詳細な解析及び検証実験を進めた。CLIPの結果において、野生型FUS(WT)は多くの標的RNAを持ち、特にイントロンに結合が認められたのに対し、R495Xは多くのエクソンに結合していることが分かった。WTは核内に局在していることから、多くの標的RNAがpre-mRNAであるのに対し、R495Xは細胞質に局在するため、多くの標的RNAが成熟mRNAであることに対応していると考えられた。RNA-seqにおける結果では、WT特異的、R495X特異的、両分子に共通した遺伝子発現変化があることが分かった。WTではスプライシング異常が認められる場合が多く、R495Xでは転写産物の長さに変化があることが分かった。ところが、CLIPにより標的であることが明らかとなった遺伝子群における発現を検証したところ、バックグラウンド遺伝子群と比較して有意に発現変化が認められたものは極わずかであり、2倍以上の変化を示したものは数遺伝子でしか無く、WT、R495X共に遺伝子発現に対する機能は極めて限局されたものであると考えられた。一方、遺伝子翻訳レベルで解析を行うRibo-seqの結果においても、WT及びR495X発現による翻訳変動は極めて小さなものであることが分かった。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
平成28年度は計画通りシーケンスの解析・検証を進めた。研究開始当初は、R495X発現によって、遺伝子の発現・翻訳過程に大きな変動が認められることを予測していたが、実際には極めて限局的な変動しか認められていない。その為、平成29年度は、僅かな発現変動についての精緻な解析を行わざるを得ないと考えている。
|
今後の研究の推進方策 |
平成29年度は得られたシーケンスの詳細について、より詳細な解析・検証を進める。特に、僅かな変動遺伝子群が位置する機能カテゴリや、その変動と翻訳過程への関係性について精緻な解析・検証を行っていく。
|
次年度使用額が生じた理由 |
年度末に放射性同位元素を用いた実験を行う予定であったが、平成29年度に実験を行うこととしたため、本金額を平成29年度に持ち越した。
|
次年度使用額の使用計画 |
放射性同位元素の購入を行い、CLIP実験に使用する計画としている。
|