研究課題/領域番号 |
15K07923
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研究機関 | 千葉大学 |
研究代表者 |
今村 亮俊 千葉大学, 薬学研究科(研究院), その他 (60741923)
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研究分担者 |
秋光 信佳 東京大学, アイソトープ総合センター, 教授 (40294962)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 長鎖非コードRNA / 細菌感染 |
研究実績の概要 |
多細胞生物は、体内に侵入した病原性微生物を排除するために免疫システムを獲得してきた。このうち自然免疫系は、昆虫からほ乳類まで高度に保存されている。自然免疫系は感染防御の第一線として働き、多様な免疫応答を制御している。従って、自然免疫応答におけるサイトカイン発現の調節機構を解明することは、宿主生物が効率的に病原体を排除するシステムを理解し、ヒトの感染症や免疫疾患の克服を目指す上で非常に重要な課題である。従って、ヒト疾患の原因解明を目指す生物系薬学分野において、自然免疫系は極めて重要な研究対象である。 ヒトやマウスの大規模なゲノム解析によって、タンパク質をコードしない非コードRNAの中でも核内に存在する200塩基以上の長さをもつ核内長鎖非コードRNA が、がんなどの疾患に関与すること、遺伝子発現制御に直接関与していることなどが明らかとなりつつある。 長鎖非コードRNAの1つであるNEAT1は様々なタンパク質と相互作用する事で、核内構造体パラスペックルを形成することが知られていたが、その生理的機能は不明であった。申請者は、①NEAT1がウイルス感染に応答して発現上昇すること、②転写抑制因子SFPQが通常はIL8遺伝子の転写制御領域上に結合し転写抑制をしていること、③ウイルス感染により発現増加したNEAT1がSFPQと結合し、SFPQをIL8遺伝子から乖離させることで転写抑制の解除が引き起こされることを解明し、NEAT1が転写抑制因子SFPQとの相互作用を介して、ウイルス感染応答に関与するという新しい知見を得た。(Imamura. K., et al. Mol. Cell (2014.)) この研究成果を継続発展し、申請者は現在、感染症という俯瞰的視点から長鎖非コードRNAの生理機能の解明を試みている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では、細菌感染における長鎖非コードRNAを介した自然免疫応答制御機構の解明を遂行し、感染症における長鎖非コードRNAの役割についての新たな学問分野を開拓し、さらに長鎖非コードRNAを標的とした免疫活性化薬・感染症治療薬のシーズを発見する研究を行う。さらに、この研究では、全く新しい核内長鎖非コードRNAの機能調節様式としての「核内RNA分解制御」を明らかにすることで長鎖非コードRNA研究に新しい分野を切り開く糸口を得る。そのため、以下の研究を遂行する。①長鎖非コードRNAの分解機構の解明②細菌感染時における長鎖非コードRNA分解抑制機構の解明 ③細菌感染時における長鎖非コードRNA発現上昇の意義の解明④長鎖非コードRNAノックアウトマウスによる個体レベルでの感染に対する応答の解明⑤長鎖非コードRNAを標的とした、感染症治療薬シーズの探索 現在までに、申請者は、①について、長鎖非コードRNAの分解機構に関与する因子を同定し、新規複合体があることを見出している。また、②について、細菌感染時にこの分解複合体の一部タンパク質が分解していることを見出した。さらに③ について、crisps/Casシステムを用いていくつかの長鎖非コードRNAノックアウト細胞を作出し、感染実験を実施した。その結果、いくつかの長鎖非コードRNAのノックアウト細胞で細菌感染によって死にやすくなることを見出した。 以上のように本研究はほぼ順調に進んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
研究予定である①長鎖非コードRNAの分解機構の解明②細菌感染時における長鎖非コードRNA分解抑制機構の解明③細菌感染時における長鎖非コードRNA発現上昇の意義の解明④長鎖非コードRNAノックアウトマウスによる個体レベルでの感染に対する応答の解明⑤長鎖非コードRNAを標的とした、感染症治療薬シーズの探索の5つの項目について、今後の推進方策を以下のようにする。 今年度は、新規に見つけた長鎖非コードRNAの新規分解複合体の生化学的解析を行う。 また、細菌感染時に引き起こされるRNA分解複合体の分解機構を、細菌の変異体解析及びタンパク質の質量分析や免疫沈降・ウエスタンブロット法によってユビキチン化などの修飾を同定する。 さらに、長鎖非コードRNAの中で重要と思われるものについては、ノックアウトマウスの作出も計画している。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度において、目的タンパク質を検出する抗体を作製したいと考えたため。
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次年度使用額の使用計画 |
目的タンパク質を検出する抗体を作製する必要がある。またRNAの発現量を見るためのqPCRを多くかけることになる。
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