研究課題/領域番号 |
15K07924
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研究機関 | 長岡技術科学大学 |
研究代表者 |
佐藤 武史 長岡技術科学大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (30291131)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 癌 / 糖転移酵素 / 転写制御 / センサー細胞 / 薬剤スクリーニング |
研究実績の概要 |
β4-ガラクトース転移酵素 (β4GalT) 4はヒト大腸癌で発現が増加し、この酵素の発現の増加は転移や予後の悪さと相関する。本研究では、大腸癌に発現する糖転移酵素に着目し、この酵素の機能と転写制御機構を明らかにする。さらに、糖転移酵素遺伝子の発現をモニターするセンサー細胞を樹立して、大腸癌に奏功する薬剤のスクリーニングシステムの構築を目指す。この酵素の機能を解析するために、β4GalT4遺伝子の発現を2倍高めた細胞をSW480ヒト大腸癌細胞から樹立した。レクチンブロット解析とTLCにより、この細胞の糖タンパク質糖鎖及び糖脂質組成を解析した結果、対照細胞と比べて糖タンパク質糖鎖は変化しなかったが、糖脂質組成は変化する傾向が見られた。次に、β4GalT4遺伝子の翻訳開始コドンから5’-上流2 kbを単離し、プロモーター活性を測定したが活性は検出されなかった。オリゴキャッピング法によって転写開始点を決定した結果、この遺伝子の転写開始点は翻訳開始コドンから5’-上流10 kb付近に複数存在した。また、ヒトβ4GalT4 mRNAには選択的スプライシングによって、構成されるエキソンが異なる2種類の5’-UTRが存在することが判明した。そこで、SW480細胞で多く使われる転写開始点を含み、転写開始点から5’-上流1.8 kbの領域を単離した。この領域にはプロモーター活性が検出され、デリーションコンストラクトを用いた解析から、この領域を5’-上流から0.5 kbまで削っても已然として高いプロモーター活性が検出された。本研究からヒト大腸癌細胞においてβ4GalT4は糖脂質の生合成に関わっていることが示唆され、この遺伝子の転写を制御する領域を0.5 kbまで絞り込むことができた。さらに、ヒトβ4GalT4遺伝子には5’-UTRが異なる2種類のmRNAが存在することが初めて明らかになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成27年度は、ヒト大腸癌細胞におけるβ4GalT4の機能を解析するために、SW480ヒト大腸癌細胞からβ4GalT4遺伝子の発現を増加させた細胞において、対照細胞と比べて糖脂質の組成が変化することを示した。また、ヒトβ4GalT4遺伝子の転写開始点を決定すると共に、この遺伝子の転写を制御する領域を0.5 kbまで絞り込んだ。現在、β4GalT4遺伝子の転写制御配列をルシフェラーゼ遺伝子の上流に繋いだプラスミドを作製し、大腸癌細胞への導入を行ってセンサー細胞を樹立中である。以上の研究成果から、次年度に行う実験の準備がほぼ整ったので、研究目的を、おおむね順調に達成できたと考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
樹立したβ4GalT4遺伝子の発現を増加した細胞を用いて、癌悪性形質を解析する。β4GlaT4遺伝子のプロモーター領域に結合する転写因子を、ゲルシフトアッセイ等により同定する。β4GalT4遺伝子の転写制御配列を含むレポータープラスミドを導入した大腸癌細胞を用いて、ルシフェラーゼ活性を指標とする薬剤スクリーニングシステムを構築する。さらに、他のβ4GalT遺伝子の発現を抑制する薬剤を用いて、構築したシステムにおける細胞の応答性を評価する。
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次年度使用額が生じた理由 |
実験の効率化を図ったことにより、当初使用を予定していた研究費を一部使用することなく、平成27年度の研究実施計画をおおむね達成できた。
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次年度使用額の使用計画 |
幾つかの研究実施計画に関して、さらに詳細に解析する必要があるのと、平成27年度から継続している研究実施計画があるため、翌年度以降に請求する研究費と合わせて使用する。
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