研究課題
RABL2はIFT複合体と相互作用することが示唆されていたが詳細は不明であった。そこで、RABL2とIFT複合体の相互作用をVIPアッセイを用いて調べたところ、GTP結合型RABL2(Q80L)がIFT74-IFT81ヘテロ二量体を介してIFT-B複合体に結合することを発見した。さらに、精子の鞭毛運動障害を持つ不妊マウスから同定されたRABL2(D73G)変異体はIFT74-IFT81二量体と相互作用できないことや、RABL2(Q80L)はCEP19とIFT74-IFT81二量体に対して相互排他的に結合することを見出した。IFT139(IFT-A複合体のサブニット)をノックアウト(KO)したヒト網膜色素上皮(RPE1)細胞では、繊毛内の順行輸送は正常だが逆行輸送が滞るために、IFT複合体と積み荷タンパク質が繊毛の先端に蓄積する。IFT139-KO細胞におけるRABL2の局在を観察したところ、繊毛先端部での蓄積は見られず基底小体に局在したままであったことから、RABL2はIFT複合体の積み荷ではないと考えられる。一方、GDP結合型RABL2(S35N)またはRABL2(D73G)変異体をRPE1細胞に過剰発現させると繊毛形成が抑制されることから、RABL2の活性化に伴うIFT複合体との相互作用が繊毛形成にとって重要であることが示唆された。また、RABL2を欠損したクラミドモナス変異株は鞭毛を形成できないことも見出した。これまでの研究結果を総合すると、RABL2はCEP19と結合した状態で基底小体に局在しているが、グアニンヌクレオチド交換因子によってGTP結合型へと変換されるとCEP19から解離し、IFT74-IFT81二量体と一過的に相互作用することによって、IFT複合体の繊毛内移行を制御し繊毛/鞭毛の形成に関与すると考えられる。
2: おおむね順調に進展している
昨年度はRABL2のエフェクタータンパク質を同定することができていなかったが、今年度はRABL2のエフェクタータンパク質としてIFT74-IFT81二量体を同定することに成功した。また、CRISPR/Cas9システムに独自の改良を加えた実用的なノックアウト細胞作製法の開発にも成功した。この手法に関する論文はMol. Biol. Cell誌に発表した。ヒト培養細胞を用いた研究の一方で、クラミドモナスのRabL2変異株を同定することに成功し、モデル生物を用いた鞭毛の解析にも進展があった。ここまでの研究をまとめた論文を投稿中であったが、2017年4月にMol. Biol. Cell誌に受理された。以上に述べたように、研究成果を複数の論文として発表できたことから、本研究課題は概ね順調に進展していると評価している。
(1) 生化学的、細胞生物学的解析: 本年度までにRABL2のエフェクタータンパク質としてIFT74-IFT81二量体を同定することができた。そこで次はRABL2のグアニンヌクレオチド交換因子(GEF)の探索を行う。RABL2のGEFを同定できた場合には、CRISPR/Cas9システムを用いてその遺伝子をノックアウトした細胞を作製し機能解析を行う。(2) クラミドモナスを用いた解析: RABL2とIFT74-IFT81二量体の相互作用がクラミドモナスにおいても保存されているかどうかを調べる。(1)でヒトのRABL2のGEFが同定できた場合には、クラミドモナスにそのホモログがあるかどうかを検索する。ホモログがあった場合には、その遺伝子の変異株を同定し機能解析を行う。(3) ゼブラフィッシュを用いた解析: 精子の鞭毛運動と一次繊毛異常に起因する病的肥満におけるRABL2とCEP19の役割を解明するために、CRISPR/Cas9システムを用いてこれらの遺伝子をノックアウトしたゼブラフィッシュを作製する。ノックアウトゼブラフィッシュが作製できた場合には、精子にどのような異常が生じているか、病的肥満の表現型を示すかどうかについて調べていく。
すべて 2017 2016 その他
すべて 雑誌論文 (6件) (うち査読あり 5件、 オープンアクセス 5件、 謝辞記載あり 4件) 学会発表 (17件) (うち国際学会 4件、 招待講演 2件) 備考 (1件)
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http://www.pharm.kyoto-u.ac.jp/physchem/