研究実績の概要 |
細胞外α-synuclein(ASN)による スフィンゴシン1-リン酸(S1P)受容体-G タンパク質の共役阻害(アンカップリング)現象について、その詳細を検討した。ドパミン系神経細胞モデルとして広く用いられているSH-SY5Y細胞にはS1P受容体としてS1P1受容体とS1P2受容体が発現しているが、ASNはS1P1受容体とGタンパク質との共役のみを特異的に阻害し、S1P2受容体の情報伝達には全く影響しないことが明らかとなった。また、この特異的S1P1受容体遮断によって、増殖刺激時のSH-SY5Y細胞における低分子量Gタンパク質Racの活性化が強く抑制され、これにより細胞外ASNが細胞遊走を抑制することも明らかにした。以上の結果は2報の論文として発表した(Okada T, Hirai C, Badawy SM, Zhang L, Kajimoto T, Nakamura SI. Sci Rep. 2016 Nov 25;6:37810., Zhang L, Okada T, Badawy SM, Hirai C, Kajimoto T, Nakamura SI. Sci Rep. 2017 Mar 16;7:44248.) さらに、S1P1受容体とGタンパク質の共役が阻害される現象について検討する中で、ASNがS1P1受容体のパルミトイル化に影響を与えていることが明らかとなった。すなわち、S1P1受容体をパルミトイル化する酵素が細胞外ASNのターゲット分子である可能性が高いと考えている。
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