研究課題
Compound Kとバンコマイシンの併用メカニズムを明らかにするため、研究を進めた。平成29年度は、前年度に構築したバンコマイシン耐性遺伝子群に含まれる酵素の大量発現を行った。そしていくつかの酵素はアフィニティークロマトグラフィーにより精製を進めた。発現条件を丁寧に検討した結果、十分量のタンパク質を得ることができたが、ある酵素については大量発現により大腸菌の溶菌が起こっているようであったため、培養量を増加させることで十分量を得ることができた。またこれらの酵素活性を評価するためのアッセイ系を構築した。現在、この系の妥当性を評価するとともに、Compound Kの阻害効果を検討している。これまでの解析で、Compound Kには細菌のtopoisomeraseを阻害する効果があることを見出している。抗菌薬のシーズとしての有用性を調べるために、ヒトのtopoisomeraseに対しての効果を解析した。現時点では目立った阻害効果は見られておらず、細菌に対する選択毒性が高いことが示唆された。今後この点は注意深く評価をしていく予定である。以上のことから、Compound Kとバンコマイシンの併用効果に関する研究成果として、(1)Compound Kはバンコマイシンが結合できるD-alanyl-D-alanineの存在量をVREにおいて増加させていること、(2)バンコマイシン耐性遺伝子群(VanA遺伝子群)の発現低下を引き起こしているわけではないこと、が明らかにされた。この結果からバンコマイシン耐性に関与する酵素活性そのものを阻害していることが予想されたため、(3)VanA遺伝子群に含まれるいくつかの酵素の精製を行った。さらに(4)ヒトtopoisomeraseに対する効果はあまり見られず、抗菌薬のシーズとして有用であることが示唆された。
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