研究課題
本研究は、2つの糖転移ドメインを有する糖転移酵素(LARGEおよびK4CP)の糖鎖伸長機構の解明を目指すものである。昨年度までに、超分子質量分析(nMS)およびX線小角散乱(SAXS)を利用した解析により、K4CPは溶液中では2量体を形成していることが予想された。本年度は、K4CPの会合状態の濃度依存性を超遠心分析を利用して調べたところ、nMSやSAXSの測定濃度領域である0.2mg/mL以上の濃度では2量体として存在しているが、0.05mg/mLの領域では単量体として存在していた。単量体として存在していた濃度は、高速AFMによってK4CPに由来する2輝点が近接している像が観測された濃度であり、1つの輝点が1つのドメインであることが明らかになった。このような濃度依存的な2量体形成の傾向は筋ジストロフィーの原因遺伝子産物であるLARGEにも認められ、高速AFMによる観測においても、2つの輝点が揺動している様子を捉えることができた。さらに基質を加えることで、時間の経過とともに糖鎖が伸延する様子が確認され、LARGEによる糖鎖合成の過程を捉えることができた。また、全反射蛍光顕微鏡による1分子蛍光共鳴エネルギー移動(FRET)の計測を行うことで、K4CPの糖鎖伸長過程を捉えることを試みた。その結果、高濃度のK4CP-Alexa647をガラス基板へ吸着させ、糖基質CH4-Cy3を結合させる条件でFRETを検出することに成功した。さらに、K4CP-Alexa647に糖基質CH4-Cy3を加え、UDP-GalNacとUDP-GlcAを加えると、段階的にFRET効率が減少する分子が捉えられた。これは、K4CP-Alexa647へCH4-Cy3が結合しFRETを起こし、糖鎖が伸長することで、K4CP-Alexa647とCH4-Cy3が離れ、FRET効率が下がったものと考えられる。以上より、2つの糖転移ドメインを有する糖転移酵素は、各ドメインの配向を柔軟に変化させることにより、ドメイン間で基質糖鎖を受け渡し、糖鎖のリピート構造の伸長を効率的に行っているものと考えられる。
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