研究課題/領域番号 |
15K07936
|
研究機関 | 名古屋市立大学 |
研究代表者 |
井上 靖道 名古屋市立大学, 薬学研究科(研究院), 准教授 (10450579)
|
研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
|
キーワード | TGF-β / エピジェネティクス / SET8 / ヒストンメチル化 / Smad |
研究実績の概要 |
TGF-βは腫瘍抑制作用と悪性化促進作用をあわせもつ二面性の因子であるが、その二面性を制御するメカニズムについてはほとんど理解が進んでいない。研究者らはメチルトランスフェラーゼSET8が新たな細胞応答選択的なTGF-βシグナルの制御因子であることを見い出し、翻訳後修飾によるTGF-βシグナル制御が二面性をコントロールする本質ではないかと考えるに至った。そこで本研究ではメチル化を中心に、多彩な翻訳後修飾によるTGF-βシグナル伝達制御機構を明らかにすることを目的とした。 本年度までの研究で以下の結果を得た。 (1)SET8によるTGF-βの増殖抑制作用の遮断。SET8のノックダウンは、TGF-βにより増殖抑制を受ける細胞であるHaCaTやA375において、p21とPAI1の発現を上昇させ細胞増殖を顕著に抑制した。その作用には、両者プロモーター上のH4K20me1修飾が関与することが示唆された。(2)SET8により変動を受けるTGF-β標的遺伝子の解析。SET8はPAI1のSmad結合領域に結合し、H4K20me1を媒介していることがわかった。一方で、TGF-β刺激によりSET8はPAI1プロモーター領域から速やかに解離し、Smad2/3とコアクチベーターの複合体と入れ替わることも見い出した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度までの目標として、(1)SET8によるTGF-βの増殖抑制作用の遮断、(2)SET8により変動を受けるTGF-β標的遺伝子の解析を挙げていた。(2)の詳細なメカニズムの全容解明にはまだ一歩ではあるが、TGF-βにより誘導されるPAI1やZFP36がTGF-βによる作用を媒介することを明らかにして論文発表するなど、全体として本研究はおおむね順調に進捗していると考えらえれる。
|
今後の研究の推進方策 |
当初掲げた計画の通り、本年度は(1)アセチル化Smad3により誘導される標的遺伝子の同定、(2)H4K20me1によるTGF-β標的遺伝子のエピジェネティック制御の解析を中心に、今年度と同様に解析を進めていく予定である。
|