研究実績の概要 |
TGF-βは腫瘍抑制作用と悪性化促進作用をあわせ持つ二面性の因子であるが、その二面性を制御するメカニズムについてはほとんど理解が進んでいない。研究者らはメチルトランスフェラーゼSET8が新たな細胞応答選択的なTGF-βシグナルの抑制因子であることを見いだし、翻訳後修飾によるTGF-βシグナル制御が二面性をコントロールする本質ではないかと考えるに至った。そこで本研究ではメチル化を中心に、多彩な翻訳後修飾によるTGF-βシグナル伝達制御機構を明らかにすることを目的とした。 本年度までの研究で以下の結果を得た。 (1) PAI-1遺伝子発現制御におけるSmadとp53のクロストーク。TGF-βの標的遺伝子の中でも腫瘍抑制的に作用するPAI-1、TristetraprolinはSmad2/3とp53が協調的に働くことで転写活性化を促すことを見出した。その作用としては、各プロモーターに結合したSmad2/3にp53がヒストンアセチルトランスフェラーゼCBPをリクルートすることで、ヒストンのアセチル化を上昇させることに起因していた。また、TGF-βによる増殖抑制作用には、PAI-1が必須の役割を果たすことも示した(Kawarada et al, Sci Rep, 2016)。(2) 脱ユビキチン化酵素による新たなTGF-βシグナル伝達制御の解析。脱ユビキチン化酵素cDNAライブラリーを構築し、TGF-βシグナルを制御し得る新規脱ユビキチン化酵素の探索を行い、複数の候補を得た。
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