研究課題
TRB1は多くの腫瘍細胞で高発現していることが知られているが、正常なp53を有するヒト乳がん細胞株MCF7細胞のTRB1をノックダウン(KD)することにより、細胞増殖が低下し、p53の標的遺伝子の発現が上昇した。これはTRB1が HDAC1をp53にリクルート→p53のアセチル化阻害→標的遺伝子プロモーターへの結合抑制 をおこしていることを明らかにした。MCF7細胞のTRB1をCRISPR/Cas9法により欠失(KO)させると、増殖速度が低下するとともに、そのスフェロイド形成能も強く抑制されることを見出した。野生型細胞では恒常的に活性化していたERK経路、AktもこのTRB1KO細胞では強く抑制され、がん幹細胞のマーカーの一つであるCD44、及びそのvariant (CD44v8-10)の発現が低下していた。これらの現象は正常細胞では見られず、複数の腫瘍細胞株で普遍的に見られた。また、上皮間葉転換(EMT)を正に制御し、浸潤・転移を促進するSnailなどの転写因子群のTGF-betaによる発現上昇がTRB1のKDによって低下するとともに、TRB1KO細胞では種々の機序の抗がん剤に対する感受性が一様に上昇することも見出したことから、TRB1がEMTを正に制御するとともに、抗がん剤に対する抵抗性獲得に寄与していることが示唆された。さらに、インスリンなどの増殖因子によってTRB1の発現が上昇し、細胞増殖を負に制御することが知られ、増殖シグナルでその活性が阻害される転写因子 FoxO1 の転写活性化能をTRB1は抑制し、糖新生関連因子の発現誘導も低下させることがわかった。一方、がんの多くで上昇している TRB3 の発現低下を指標としたアッセイ系を確立し、様々な外来植物のエキスライブラリーを用いたスクリーニングで、複数の活性化合物を同定し、その作用メカニズムの解析を進めている。
すべて 2017 その他
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http://www.nagoya-cu.ac.jp/phar/grad/iryo/yakugaku/joho.html
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