研究課題/領域番号 |
15K07939
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研究機関 | 岩手医科大学 |
研究代表者 |
中西 真弓 岩手医科大学, 薬学部, 教授 (20270506)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | プロトンポンプ / V-ATPase / 破骨細胞 / 骨吸収 / 分泌リソソーム |
研究実績の概要 |
本課題は、液胞型プロトンポンプであるV-ATPaseの構造的多様性に注目し、破骨細胞の分泌リソソームにおける機能の解明を目的としている。これまでに、V-ATPaseのa3イソフォームの遺伝子欠損マウス由来の脾臓マクロファージから分化を誘導した破骨細胞を解析し、リソソームに局在するa3が、分泌リソソームの細胞膜への移動に必須であることを示した。さらに、このイソフォームと相互作用する小胞輸送因子を同定した。 平成28年度は、マウスの体内で分化し骨吸収している破骨細胞を用いて、分泌リソソームが波状縁(ひだ状の構造を持つ骨側の形質膜)に向かって移動し膜融合する過程にa3が必要であることを示した。これは、in vitroで誘導した破骨細胞の結果と一致する。 また、a3KOマウスのマクロファージから誘導した破骨細胞において、ゴルジ装置や初期エンドソームの局在は野生型と同様であることを明らかにした。蛍光標識したデキストランのエンドサイトーシスや、リポポリサッカライド刺激によるサイトカインの分泌も、野生型と同様であった。これらの結果は、a3がオルガネラ輸送や膜動態全般に影響しているのではなく、分泌リソソームに特異的に機能していることを示している。 さらに、a3と特異的に相互作用する小胞輸送因子は、野生型マウスの破骨細胞ではリソソームに局在するが、a3KOでは細胞質全体に分散していた。一方、リサイクリング・エンドソームに局在し、a3との結合が検出されない小胞輸送因子の局在は、a3欠損の影響をほとんど受けなかった。a3は、特定の輸送因子を分泌リソソームにリクルートしていると考えられる。以上は、各オルガネラに特異的に局在するaイソフォームが、対応する小胞輸送因子をリクルートすることで、オルガネラ輸送の方向を決定しているという我々の作業仮説を支持する重要な知見である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
V-ATPaseのa3イソフォームが、破骨細胞における分泌リソソームの細胞内輸送に関わっている。平成28年度は、その分子メカニズムの解明に向け、a3が特定の小胞輸送因子と結合し、リソソームへの局在に影響していることなどを明らかにできたので、研究が順調に進展していると判断した。一方で、a3を欠損した破骨細胞を用いて、ヒト大理石病の発症機構の解明に着手することを予定していたが、準備に時間がかかってる。以上を踏まえて、おおむね順調な進展とした。
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今後の研究の推進方策 |
これまでに、大理石病患者のa3遺伝子に変異が入っている例が複数報告されている。そこで、a3KO破骨細胞に、患者由来の変異を持つa3を導入することで、発症メカニズムを解析する計画であった。しかし、昨年度は実施できなかったので、今年度実施する予定である。 また、イソフォーム特異的な機能を解明する目的で、分泌リソソームの輸送におけるa3の役割をa1あるいはa2イソフォームが代替できるかを検討する。さらに、各aイソフォームと小胞輸送因子ファミリーとの相互作用の網羅的に解析し、オルガネラや小胞の輸送におけるaイソフォームの関与を検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究の進行状況に合わせて消耗品などを購入していたが、予定よりも若干の遅れが生じたため、6万円程度繰り越しとなった。しかし、次年度使用額は僅かであり、問題ない範囲と考えている。
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次年度使用額の使用計画 |
本年度は最終年度であるため、次年度使用額を含めて計画的に消耗品などを購入する予定である。
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