アレルギー疾患はその発症や症状の憎悪に時間特異性があることが経験的に知られているが、なぜこのような概日リズムがあるのかは不明である。これまで時計遺伝子の一つNFIL3のノックアウト(KO)マウスを用いた解析から、時計遺伝子NFIL3がTh2やTh17タイプの炎症反応の制御に関わっていることを明らかにしてきた。本研究では、アレルギー性疾患、特に炎症性皮膚炎に注目し、時計遺伝子NFIL3がその病態制御にどのように関わっているのかを明らかにすることを目的としている。アレルギーの発症には、抗原による感作と、感作後の炎症誘導の過程が必須であり、樹状細胞と呼ばれる抗原提示細胞が中心的役割を担っている。NFIL3 KOマウスでは、脾臓やリンパ節の常在性樹状細胞CD8a+樹状細胞が欠損していることから、CD8a+樹状細胞と発生系統的に近いCD103+樹状細胞の分化もNFIL3によって制御されている可能性がある。そこでNFIL3 KOマウスにおいて皮膚所属リンパ節に多く存在するCD103+樹状細胞の存在状態を調べると、CD103+樹状細胞は欠損していた。in vitroでCD103樹状細胞の分化を分子レベルで解析するために、骨髄細胞をサイトカインFlt3LとGM-CSFの存在下でその分化誘導法を用いた。分化効率は既報に比べ低かったが、レンチウイルスを用いた再構成系を用いるため、感染マーカーとしてのGFPを指標として、解析を行うことができた。またin vivoで効率よくCD103+樹状細胞を誘導するためにメラノーマ細胞株B16にFlt3LやGM-CSFを過剰発現させ、それらの皮下投与によりリンパ節においてCD103+樹状細胞の強力な誘導を確認できた。これらin vitroやin vivoの系を用いて、様々なNFIL3変異体発現CD103樹状細胞の分化能や抗原提示能を解析した。
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