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2015 年度 実施状況報告書

刷り込み学習の臨界期を決定する脳内分子機構

研究課題

研究課題/領域番号 15K07945
研究機関帝京大学

研究代表者

山口 真二  帝京大学, 薬学部, 准教授 (60398740)

研究期間 (年度) 2015-04-01 – 2018-03-31
キーワード刷り込み / 臨界期 / 甲状腺ホルモン / Rho / アクチン / 生化学
研究実績の概要

本研究の目的は、刷り込み学習の臨界期を開く甲状腺ホルモン(T3)に注目して、学習臨界期の分子基盤を解明することである。ある種の学習は、生後の限られた臨界期又は感受性期と呼ばれる時期にしか習得されず、その時期を過ぎると習得できなくなる。鳥類のヒナが、孵化直後に親を記憶して追いかける刷り込み学習はその典型的な例である。私たちは、刷り込み開始後、甲状腺ホルモン(T3)が脳内へ急速流入し、臨界期を開く決定因子となること、そして遺伝子的発現を伴わず速やかに作用し(nongenomic)、ヒナは記憶を獲得することを発見した。平成27年度では、学習臨界期の開始を決定する分子機構の解明を試みた。私たちは、T3の脳内注入によりリン酸化が更新する蛋白の同定をフォスフォプロテオーム解析により行った。その結果、nucleotide diphosphate kinase2 (NDPK2) のリン酸化が亢進されることが分かった。NDPK2のキナーゼ活性を特異的阻害剤により抑制すると、刷り込みの感受性期が再び開かなくなることから、T3の下流で、臨界期を再び開く情報伝達経路に関わっていると考えられた。これまでに、代表者はRhoGTPaseファミリー蛋白質の一つであるRho キナーゼの活性阻害剤が、T3と同様にメモリープライミング活性を有することを見出している。今後は、Rhoキナーゼ情報伝達経路とNDPK2の関連を調べていこうと考えている。この成果は、Neurosci Lett. 2016 612:32-37にて報告した。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

平成27年度は、刷り込み学習の臨界期を開く甲状腺ホルモン(T3)に注目して、学習臨界期の開始かかわる情報伝達経路の解明を行った。そのために、T3の脳内注入によりリン酸化が更新する蛋白の同定をフォスフォプロテオーム解析により試みた。その結果、甲状腺ホルモンの下流で、臨界期を再び開く情報伝達経路に関わるnucleotide diphosphate kinase2 (NDPK2) を同定し、この成果は、Neurosci Lett. 2016 612:32-37にて報告した。学習臨界期の開始かかわる情報伝達経路の解析が順調に進んでいると思われる。

今後の研究の推進方策

これまでに、代表者はRhoGTPaseファミリー蛋白質の一つであるRho キナーゼの活性阻害剤が、T3と同様にメモリープライミング活性を有することを見出している。今後は、Rhoキナーゼ情報伝達経路とNDPK2の関連を調べていこうと考えている。さらに、Rhoキナーゼの活性阻害剤がメモリープライミング活性を持つことから、メモリープライミングが成立する過程では、神経微細構造が変化しているものと考えられる。T3やRhoキナーゼ阻害剤の一過的な脳内投与により、神経微細構造の量的変動と形態変化がどの程度おこるかを統計的に解析していく。また、Rhoキナーゼは、アクチンフィラメントの重合を促進し、アクチン細胞骨格のダイナミクスを調節する。アクチン骨格に影響があるかどうかを免疫染色などにより検討する。

次年度使用額が生じた理由

平成27年度は、プロテオーム解析を行い、NDPK2を甲状腺ホルモン下流情報伝達分子として同定し、一定の成果を得た。それ以降の解析を平成28年度は精力的に進めていきたい。実際の神経細胞導入をアデノウイルスを用いて遺伝子導入していこうと考えており、ウイルスベクター作成、ウイルスの導入、行動とリンクした遺伝子発現解析といった一連の解析に物品費がかかると見込まれる。

次年度使用額の使用計画

メモリープライミングが成立する過程では、神経微細構造が変化しているものと考えられる。T3やRhoキナーゼ阻害剤の一過的な脳内投与により、神経微細構造の量的変動と形態変化がどの程度おこるかを統計的に解析していく。ウイルスベクター作成、ウイルスの導入、行動とリンクした遺伝子発現解析といった一連の解析に物品費がかかると見込まれる。また、Rhoキナーゼは、アクチンフィラメントの重合を促進し、アクチン細胞骨格のダイナミクスを調節する。アクチン骨格に影響があるかどうかを免疫染色などにより検討する。

  • 研究成果

    (4件)

すべて 2016 2015

すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 謝辞記載あり 2件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (2件) (うち国際学会 1件)

  • [雑誌論文] Involvement of nucleotide diphosphate kinase 2 in the reopening of the sensitive period of filial imprinting of domestic chicks (Gallus gallus domesticus).2016

    • 著者名/発表者名
      Yamaguchi S, Aoki N, Takehara A, Mori M, Kanai A, Matsushima T, Homma KJ.
    • 雑誌名

      Neurosci Letter

      巻: 612 ページ: 32-37

    • DOI

      10.1016/j.neulet.2015.12.004. Epub 2015 Dec 7.

    • 査読あり / 謝辞記載あり
  • [雑誌論文] Critical role of the neural pathway from the intermediate medial mesopallium to the intermediate hyperpallium apicale in filial imprinting of domestic chicks (Gallus gallus domesticus).2015

    • 著者名/発表者名
      Aoki N, Yamaguchi S, Kitajima T, Takehara A, Katagiri-Nakagawa S, Matsui R, Watanabe D, Matsushima T, Homma KJ.
    • 雑誌名

      Neuroscience.

      巻: 308 ページ: 115-124

    • DOI

      doi: 10.1016/j.neuroscience.2015.09.014. Epub 2015 Sep 8.

    • 査読あり / オープンアクセス / 謝辞記載あり
  • [学会発表] ニワトリヒナにおける甲状腺ホルモンは経験依存の学習促進効果をもたらす2016

    • 著者名/発表者名
      武原顕彦、青木直哉、山口真二、本間光一
    • 学会等名
      日本動物学会第68回関東支部大会
    • 発表場所
      神奈川大学横浜キャンパス
    • 年月日
      2016-03-12 – 2016-03-12
  • [学会発表] Critical role of the novel neural pathway in the cerebrium in the filial imprinting of newly-hatched domestic chicks2016

    • 著者名/発表者名
      山口真二、青木直哉、本間光一
    • 学会等名
      Integrative Network Linking Multiple Brain Areas for Behavioral Adaptation (国際学会)
    • 発表場所
      同志社大学 寒梅館
    • 年月日
      2016-03-03 – 2016-03-04
    • 国際学会

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公開日: 2017-01-06  

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