研究課題/領域番号 |
15K07949
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研究機関 | 東邦大学 |
研究代表者 |
永田 喜三郎 東邦大学, 理学部, 准教授 (10291155)
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研究分担者 |
小林 芳郎 東邦大学, 理学部, 教授 (10134610) [辞退]
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 老化 / アポトーシス細胞 / マクロファージ / 貪食 / 炎症 |
研究実績の概要 |
アポトーシス細胞に対するマクロファージの貪食能と炎症応答における老化の影響を解明するため、野生型の若年および老化マウス を用いて腹腔常在性マクロファージの後期アポトーシス細胞貪食能と後期アポトーシス細胞の腹腔投与による炎症応答の解析を行った。 in vivo での結果からマクロファージからの MIP-2 産生量を詳しく解析するため、後期アポトーシス細胞と共培養した際の MIP-2 産生量を測定した。若年マウスでは、MIP-2 は産生されなかったが、老化マウスでは高濃度で検出された。他の研究報告でマクロファージから MIP-2 が産生されるにはマクロファージへのIFN-γによる刺激が必要であることが示されている。in vivo での結果から MIP-2 産生へのIFN-γの作用を調べるため、in vitro でマクロファージに IFN-γ刺激を行い、後期アポトーシス細胞を貪食させたところ、若年マウスでもMIP-2 産生を確認できたが、IFN-γ刺激を行わなかった老化マウスマクロファージの方が産生量が多いことが明らかとなった。この現象を解析するため、マクロファージの活性化に焦点を当て解析を行ったところ、活性化し分極したマクロファージの表現型の一つであるM1マクロファージのマーカーである CD40 の発現が老化マウスマクロファージにおいて増加し、M1 に分極していることが観察された。これらの結果から、老化によって腹腔のマクロファージが活性化し表現型が M1 となることで、アポトーシス細胞の貪食能が低下、長時間残存し、多量のMIP-2 を産生することによって急速かつ強力な炎症応答を引き起こし、様々な疾患の原因となっていることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
計画した個体老化による影響については、予定通り成果を出している。また細胞老化についての計画については、長期培養可能なマクロファージの樹立に留まっており、計画していた培養期間と細胞老化との関わりについて詳細な解析にまでは至っていないが、今年度計画していた移植実験の条件検討を先に進めており、全体的に概ね順調とした。
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今後の研究の推進方策 |
i)若年/老化マクロファージの老化/若年マウスへの相互移植実験:若年/老化マウスから調整した腹腔マクロファージをクロドロネートによりマクロファージを枯渇処理した老化/若年マウスにそれぞれ腹腔内に相互移植し、アポトーシス細胞の貪食除去への影響および死細胞により誘導される炎症応答への影響、また貪食率への影響および貪食能への影響について解析し、マクロファージの貪食能に対する体内環境の影響を調べ、個体老化と細胞老化との関わりについて明確化する。 ii)アポトーシス細胞認識分子への老化の影響:老化マウスおよび若年マウスから腹腔マクロファージを調整し、アポトーシス細胞との相互作用への影響およびMFG-E8およびTim-4の発現への影響について解析し、老化マウスにおけるマクロファージの貪食能低下の分子メカニズムを明らかにする。 iii)老化がHMGB-1分子自体に影響を及ぼしている可能性があるので、HMGB-1放出量への影響、放出されたHMGB-1分子の酸化の有無および(酸化が検出された場合)老化・若年マウス間での差異について調べ、炎症応答の元凶となるHMGB-1の機能に対する老化の影響について明確化し、老化における炎症応答の悪化のメカニズムに迫る。また以前からDAMPsの受容体としてMincleという分子が注目されている。そこで、老化による炎症応答の悪化とMincleとの関わりを探るため、Mincleの発現への影響およびMincleのシグナル伝達への影響について調べ、DAMPsへの老化の影響について広範囲にフォローし、さらに老化における炎症応答の悪化のメカニズムを追求する。
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次年度使用額が生じた理由 |
長期培養可能なマクロファージの解析に用いる予定であった生化学試薬を購入しなかったため、本計画を今年度に予定している。
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次年度使用額の使用計画 |
i細胞老化に伴うマクロファージの貪食能への影響:細胞老化が、テロメアや細胞老化マーカーの一つである酸性β-galactosidaseなどと相関があることは広く知られているが、細胞の機能への影響を調べた報告はあまりない。そこで長期培養可能な未成熟なマクロファージを利用して、老化マウスおよび若年マウス骨髄細胞から長期培養可能な未成熟マクロファージを樹立し、マクロファージの細胞老化によるphenotype および細胞形態の変化および培養期間と貪食応答との関係(細胞老化とともに貪食能は低下するのか?)ついて解析し、老化による貪食能の低下と細胞老化との相関関係について調べる。
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