研究課題
既知の細胞周期制御タンパク質は細胞増殖制御を担う一方で、これまで報告されてきた種々の遺伝子欠損マウスの表現型から器官形成への関わりが明らかとなってきた。申請者らが作成・解析を行ってきたもののうち、骨芽細胞の破骨細胞の支持能の増強により骨粗鬆症様の表現型を示す Pin1 欠損マウスと骨芽細胞の破骨細胞指示能抑制により骨軟化症様の表現型を示す p57Kip2 欠損マウスの知見から、骨芽細胞細胞増殖促進因子と細胞増殖阻止因子とのバランスが骨代謝の恒常性維持に不可欠であることが示唆された。そこで申請者ら、骨芽細胞の増殖能亢進が骨粗鬆症の予防・治療の方策となることを考え、二つの遺伝子のダブル欠損マウスを作出しPin1 遺伝子欠損マウスの呈する骨粗鬆症様異常が p57Kip2 欠損で回避されることを予想した。申請者らは、上記の仮説から骨組織に異常の無い個体が作出されてくることを期待した。実際に平成29年度に Pin1ヘテロ・p57Kip2 ヘテロの遺伝系を示す雌雄の交配から、Pin1 と p57Kip2 ダブル欠損マウスを獲得したが、新生児致死を示した。これは口蓋裂によるものでp57Kip2欠損体の表現型と一致していたことから、骨芽細胞の増殖・分化における Pin1 と p57Kip2 との関係はp57Kip2がPin1の関わるシグナルよりも下流に位置することが強く示唆された。p57Kip2発現を抑えることが出来れば、少なくともPin1シグナル破綻による骨粗鬆症の治療が可能であることが期待された。これらの知見に基づき、申請者らは初代培養系での分化誘導前後の骨芽細胞の分化マーカー分子や破骨細胞支持分子の発現に対するPin1依存性とp57Kip2欠損の影響を時系列で検討し明らかとし、p57Kip2機能抑制による骨粗鬆症治療の機序を提案する。
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Biochemical and Biophysical Research Communications
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