研究課題/領域番号 |
15K07951
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研究機関 | 名城大学 |
研究代表者 |
山田 修平 名城大学, 薬学部, 教授 (70240017)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | ヒアルロニダーゼ / コンドロイチン硫酸 / ヒアルロン酸 / 癌 |
研究実績の概要 |
本研究では、ヒアルロニダーゼ(HYAL)ファミリーの1つである、新規酵素ヒアルロニダーゼ4(HYAL4)の、癌および炎症における役割を解明しようとしている。HYAL4はヒアルロン酸によく似たグリコサミノグリカンであるコンドロイチン硫酸(CS)に特異的に作用する酵素であり、癌の発症に関係する可能性がある。今年度は、(1)培養細胞を用いた癌の悪性度に及ぼすHYAL4の効果を調べるため、ヒトの癌組織や炎症組織でのHYAL4の発現について調べた。様々な癌組織や炎症組織におけるHYAL4の発現亢進を、リアルタイムPCRで定量したところ、複数のがん細胞株において発現上昇することを見いだした。(2)培養細胞を用いた癌の悪性度に及ぼすCSオリゴ糖の効果を調べるため、HYAL4でCS-C、CS-Dを消化し、HYAL4の分解産物のオリゴ糖の大量調製を計画した。このためには大量のHYAL4が必要であるため、酵母でのHYAL4大量発現系を構築し、酵素の大量調製に成功した。(3)癌の悪性度に及ぼすHYAL4の効果を調べる一環として、細胞内でのHYAL4の局在部位の解析、HYAL4の基質特異性に最も大きく貢献するアミノ酸残基の同定を行った。これら(1)~(3)の成果については学会で発表した。さらに、(4)HYAL4の機能解明のため、ノックアウトマウスの作製を継続的に行っている。ベクターの構築まで完了しており、現在スクリーニング条件の検討を行っている。(5)海外研究協力者であるインド バンガロール大学のBasappa博士らが化学合成した候補化合物について、HYAL阻害活性をin vitroで調べ、HYAL4を阻害する化合物をスクリーニングした。現在までに特異的な阻害剤は見つかっていない。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成27年度は、(1)培養細胞を用いた癌の悪性度に及ぼすHYAL4の効果、(2)培養細胞を用いた癌の悪性度に及ぼすCSオリゴ糖の効果、(3)HYAL4ノックアウトマウスの解析、(4)ヒトの癌組織や炎症組織でのHYAL4の発現、(5)HYAL4に特異的な阻害剤の開発について実験を行う予定であった。(1)、(2)については予定通り進行している。(3)については、一昨年度に予定していたノックアウトマウスの作製自体が遅れているが、昨年度の進捗は特に問題なく進んでいる。(4)については、予想以上の成果が出た。(5)については、期待通りの結果が得られておらず、対応方法を検討中である。全体としては、ほぼ順調である。
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今後の研究の推進方策 |
(1)培養細胞を用いた癌の悪性度に及ぼすHYAL4の効果、(2)培養細胞を用いた癌の悪性度に及ぼすCSオリゴ糖の効果、(4)ヒトの癌組織や炎症組織でのHYAL4の発現、の三項目については順調に進んでいるので、特にこれらの研究を進めることに注力したい。(3)HYAL4ノックアウトマウスの解析についても、マウスの作製を急ぎ進めている。マウスさえ作製できれば、一気に進むと思われる。もし期待通りに進まなかった場合に備え、CRISPR-Cas9を使ったノックアウトマウスの作製も検討中である。(5)HYAL阻害活性をもつ化合物の探索については、大量のスクリーニングを同時に出来るようにするため、酵素活性測定法の簡便化を検討している。この方法が確立すれば、Basappa博士の化合物だけでなく、多くの化合物ライブラリーを使って阻害剤の探索ができるものと期待している。
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次年度使用額が生じた理由 |
ほぼ予定通りに使用したが、若干の端数が発生した。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度の消耗品費に組み込み、使用する。
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