研究課題/領域番号 |
15K07952
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研究機関 | 京都薬科大学 |
研究代表者 |
藤室 雅弘 京都薬科大学, 薬学部, 教授 (20360927)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | ヘルペスウイルス / Wntシグナル / アポトーシス / がんウイルス / 小胞体ストレス / IRE1 |
研究実績の概要 |
カポジ肉腫関連ヘルペスウイルス(KSHV)は、健常人に感染すると2本鎖環状DNAとして細胞核内で潜伏感染する。しかし、感染者の免疫不全時に、KSHVはB細胞性リンパ腫やカポジ肉腫を引き起こす。KSHVが発現するウイルス蛋白質は、宿主細胞のWntシグナル伝達、翻訳後修飾、小胞体ストレス応答を利用または破綻させることで、感染細胞のがん化や感染維持を行なう。本研究では、「Wntシグナル伝達と小胞体ストレス応答」を標的としたKSHVによる脱制御機構の解明を目指し下記の3課題の研究を実施した。
①KSHV感染B細胞性リンパ腫(PEL)に対する抗腫瘍化合物の探索と作用機序解析機構の解明: KイオノフォアであるNigericinは、PEL細胞内のβ-カテニンとWntシグナルの標的遺伝子産物CyclinDを減少させ、アポトーシスを誘導した。つまり、NigericinはPELで恒常的に活性化しているWntシグナルを阻害し、細胞死を惹起することを見出した。 ②KSHV によるSnailの安定化の解明: KSHVの発現するLANA蛋白質は、Snailの不の制御因子GSK-3betaの細胞質局在を核局在に変化することで、Snailの安定化を誘導することを明らかにした。 ③KSHVによる小胞体ストレス応答(UPR)の脱制御の分子機構の解明: KSHVが発現するウイルス蛋白質LANAとvCyclinはKSHVは細胞内のIRE1のmRNAの発現を減少させ感染細胞内のUPRを抑制することを見出した。さらに、小胞体ストレスはPEL細胞に潜伏感染しているKSHVを溶解感染(ウイルスの再活性化)へと移行させることも明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究課題の①と②は概ね研究実施計画どおりの進行状況である。課題③については既に研究成果を論文で発表するに至っている。
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今後の研究の推進方策 |
交付申請書に記載した「研究実施計画」に従い研究を展開する予定である。予想より研究の進行が進んだ課題は前倒でさらに研究を進める。
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次年度使用額が生じた理由 |
当該年度の2-3月に行う予定だった研究課題の一つを次年度4月に行うことになり、そのための研究費(約10万円)が次年度使用額として生じた理由である。
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次年度使用額の使用計画 |
計画書どおり、未実施の研究計画を4月以降に直ちに行い、そのための研究費として使用する。
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